『AI時代のトリセツ設計:AIは情報の「意味」を理解できるか?』の検証で使用した資料を掲載します。詳細についてご確認ください。実際にお手元で試すときにご活用いただけましたら幸いです。
この検証では、Google Geminiを使用しております。詳しくは、Geminiのページでご確認ください。
目次
資料1:参照する国際基準の概要
資料1-1 : JIS X 0153概要
■JIS X 0153: 2024 (ISO/IEC/IEEE 26514: 2022) とは
~「品質の良いトピック(モジュール)」を作るための設計・作成ガイドライン~
正式名称:
JIS X 0153: 2024 システム及びソフトウェア技術-利用者情報の設計及び作成 (国際規格 ISO/IEC/IEEE 26514: 2022 を基に作成された日本産業規格)
概要:
この規格は、利用者情報(取扱説明書、ヘルプなど)を、単なる「文書作成」ではなく、ソフトウェアライフサイクルプロセスの一部として工学的に設計及び作成するための要件を定めたものです。規格は、情報製品を開発する際のプロセスと、利用者情報の構造及び機能的な要求事項(情報製品の品質)の両方を規定しています。
AI時代のトリセツ(カード型モデル)における重要性:
「カード型モデル」の基盤となる情報の品質を担保する上で、この規格は以下の点で重要なガイドラインとなります。
- 情報の構造化: 情報を、ユーザーの目標達成を助けるために、概念的情報(なぜ)、教示情報(どうやって、手順)、参照情報(何が、リストやコマンド)などに分類し、一貫した構造で記述することを求めています。
- 品質特性の定義: 高品質なドキュメントが満たすべき基準として、正確性、一貫性、分かりやすさ、簡潔性、ミニマリズム、アクセシビリティなどの特性を定義しています。
- プロセスの標準化: 情報作成プロジェクトの計画、管理、レビュー、及び構成管理を含む情報管理プロセスを規定することで、作成者の技量に依存せず(属人性を排除)、一定の品質を保つことを目指しています。
補足:
「カード型モデル」の「カード」は、規格内で「モジュール性」や「トピック」として構造化された情報(自己完結したトピックで表現される情報)に対応しており、再利用性や検索性を高めるための基礎となります。
資料1-2 : IEC PAS 63485 (iiRDS) 概要
■IEC PAS 63485 (iiRDS) とは
~デジタルツインに付与する「情報交換のための世界標準のプロセスモデル」~
正式名称:
IEC PAS 63485: 2023 Intelligent Information Request and Delivery – A process model for the exchange of information for use (国際電気標準会議(IEC)により公開仕様書(PAS) として発行)
概要:
この規格は、技術的な利用者用情報(iiRDSは商標名)を、スマートマニュファクチャリングやIoTなどのデジタル化された環境において、「インテリジェント(賢く)」に要求・配信するための情報フロー及びプロセスモデルを定義したものです。
従来の「PDFファイル丸ごと」での提供ではなく、情報を情報ユニット(トピック)単位で管理し、それぞれに詳細なセマンティックリッチメタデータを付与します。これにより、リアルタイムで、ユーザーの状況に応じた情報(コンテキスト、タスク)の選択的かつ動的な配信を可能にします。
AI時代のトリセツ(カード型モデル)における重要性:
インテリジェント情報は、構造的・意味的に強化された情報であり、機械間の適応的な通信を可能にする基盤です。
- 共通のセマンティクス(意味モデル): 企業やシステム間で情報交換を行うために、製品メタデータ(P)、機能メタデータ(F)、管理メタデータ(A) メタデータモデル(オントロジー)の使用を要求します。これにより、異なる情報提供者や異なるシステム間でも、情報の意味(セマンティクス)が統一されます。
- 状況に応じた配信: 情報ユニットはトピック指向で構造化され、一つのトピックは一つの特定の質問に答えることに焦点を当てます。メタデータ(P, F)を用いることで、利用者の役割、必要なスキルレベル、製品ライフサイクルフェーズなどの利用コンテキストに合わせて、最小限かつ最適な情報を絞り込んで提供します。
- IoT/デジタルツイン連携: 機器やシステムのデジタルツインに技術情報を動的につなぎ、IoT環境における効率的、効果的、かつ安全な製品利用を支援します。エラーコードやセンサーデータといったイベント情報に基づいて、自動的に対応する修理手順や操作情報(教示情報)を配信する基盤となります。
補足:
例えるならば、iiRDSは、情報を単なるファイルとして扱うのではなく、図書館のカタログカード(メタデータ) と、それを特定の利用者がアクセスする際の標準化された貸し出し・返却プロセス(情報フローモデル) を定義するようなものです。利用者の質問(要求)に対して、書棚全体(PDF全体)を渡すのではなく、正確な場所と内容がラベル付けされた適切なトピック だけを即座に提供できるようにする仕組みです。
資料2:実験に使用したカード型情報
資料2-1:カードA【製品X-100】CPUユニットの交換手順
カードA:
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード中央にあるユニットの固定レバーを押し下げ、フックから外してロックを解除します。
4. ユニットを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいユニットをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
資料2-2:カードB【製品X-100】メモリ・モジュールの交換手順
カードB:
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード右側にあるモジュールの固定クリップ(両端)を押し下げ、ロックを解除します。
4. モジュールを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいモジュールをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
資料3:実験1 – 「メタデータなし」での問合せ
資料3-1:実験1 – プロンプト(全文)
あなたは、製品「X-100」のサポート担当AIです。
以下の「取扱説明書データベース」に含まれる情報のみに基づいて、ユーザーの質問に答えてください。
【取扱説明書データベース】
—
タイトル:カードA
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード中央にあるユニットの固定レバーを押し下げ、フックから外してロックを解除します。
4. ユニットを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいユニットをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
—
タイトル:カードB
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード右側にあるモジュールの固定クリップ(両端)を押し下げ、ロックを解除します。
4. モジュールを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいモジュールをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
—
【ユーザーの質問】
X-100のメインボードの部品を交換したいのですが、ロックの外し方を教えてください。
資料3-2:実験1 – 結果(全文)
製品X-100のサポート担当AIです。お問い合わせありがとうございます。
取扱説明書データベースによると、メインボード上の交換部品によってロックの外し方が異なります。交換しようとしている部品の位置や形状に合わせて、以下の2つの方法から該当するものをご確認ください。
1. メインボード「中央」のユニットを交換する場合(タイトル:カードA 参照)
ロックの外し方:
メインボード中央にあるユニットの固定レバーを押し下げ、フックから外してロックを解除します。
2. メインボード「右側」のモジュールを交換する場合(タイトル:カードB 参照)
ロックの外し方:
メインボード右側にあるモジュールの固定クリップ(両端)を押し下げ、ロックを解除します。
補足:
いずれの場合も、作業前には必ず電源を切り電源ケーブルを抜くこと、およびサイドカバーを取り外すことが必要です。
お客様が交換されようとしているのは、どちらの部品になりますでしょうか?
資料4:実験2 – メタデータを自動付与する
資料4-1:実験2 – プロンプト(全文)
あなたは、技術ドキュメントの構造化を専門とする「情報アーキテクト」です。
以下の2つの「情報カード(テキスト)」の内容を解析し、それぞれのカードに適切な「メタデータ」を付与してJSON形式で出力してください。
# 指示
1. 各カードの内容を読み解き、以下の定義に基づいてメタデータを抽出・付与してください。
2. 出力は機械可読なJSON形式のみとしてください。
# メタデータの定義(iiRDS参考)
– InformationType(情報の種類): “Instruction”(手順)、”Description”(説明)、”Troubleshooting”(トラブルシューティング)の中から最も適切なものを選択。
– ProductVariant(対象製品): テキストから製品名を抽出。
– Component(対象部品): 作業の対象となっている具体的な「部品名」を正確に抽出。
# 対象となる情報カード
—
【カードA】
タイトル:製品X-100 CPUユニットの交換手順
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード中央にあるユニットの固定レバーを押し下げ、フックから外してロックを解除します。
4. ユニットを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいユニットをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
—
【カードB】
タイトル:製品X-100 メモリ・モジュールの交換手順
1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。
2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。
3. メインボード右側にあるモジュールの固定クリップ(両端)を押し下げ、ロックを解除します。
4. モジュールを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。
5. 新しいモジュールをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。
—
資料4-2:実験2 – 結果(全文)
[
{
“CardID”: “CardA”,
”Title”: “製品X-100 CPUユニットの交換手順”,
”Metadata”: {
”InformationType”: “Instruction”,
”ProductVariant”: “製品X-100”,
”Component”: “CPUユニット”
}
},
{
”CardID”: “CardB”,
”Title”: “製品X-100 メモリ・モジュールの交換手順”,
”Metadata”: {
”InformationType”: “Instruction”,
”ProductVariant”: “製品X-100”,
”Component”: “メモリ・モジュール”
}
}
]
資料5:怖くない!Excel管理表がそのままシステムに入る「JSON」超入門
記事本編で登場した「JSON(ジェイソン)」というデータ形式。「コードみたいで難しそう…」と身構えてしまった方もいるかもしれません。 しかし、これはプログラマーだけのものではありません。実は、私たちテクニカルライターが普段意識している「情報の構造化」を、もっともシンプルに表現しただけのものです。
なぜAIとの対話でJSONを使うのか? その理由は「人間にもAIにもメリットがあるから」です。
1. JSONは「デジタルな記入用紙」
JSONは、プログラム(命令文)ではありません。ただの「値のペア」を並べたリストです。 例えば、皆様がマニュアルの属性管理表をExcelで作る時、以下のように書きませんか?
- 機種名: X-100
- 部品名: CPU
- 作業種別: 交換
これをJSONで書くと、こうなります。
{
"機種名": "X-100",
"部品名": "CPU",
"作業種別": "交換"
}
見ての通り、やっていることは「項目名」と「中身」をコロン(:)で繋いでいるだけです。 DITAやXMLに馴染みのある方なら、「タグの代わりにカッコ { } を使って階層を表現しているだけ」と考えれば、ぐっと親しみが湧くはずです。
2. なぜJSONを使うと便利なのか?
「Excelでいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、AI活用においてJSONは最強のツールになります。
- AIが理解しやすい: AIはJSONの構造(親子関係)を正確に理解します。「製品Aの中にある、部品Bの、手順C」といった入れ子構造も、JSONなら誤解なく伝わります。
- そのままシステムに入る: これが最大のメリットです。AIに出力させたJSONデータは、そのままWebサイトの検索システムや、CMS(コンテンツ管理システム)のデータベースに「コピペ」で登録できます。 人間がExcelを見ながら管理画面に手入力する…という「転記作業」が一切不要になるのです。
まとめ
JSONは、AIに指示を出し、その結果をシステムに渡すための「共通の箱」です。 「中身を記述するのはAI」「箱の設計図(スキーマ)を書くのは人間」。この分担さえできれば、JSONは皆様の業務を劇的に効率化する武器になります。
資料6:実験3 – 「メタデータあり」での問合せ
資料6-1:実験3 – プロンプト(全文)
あなたは、製品「X-100」のサポート担当AIです。
以下の「構造化された取扱説明書データベース」を知識源として、ユーザーの質問に答えてください。
# ルール
1. ユーザーの質問が曖昧な場合は、データベースの「Metadata(特にComponent)」を参照し、対象を特定するための「問いかけ」を行ってください。
2. 決して推測で回答せず、確信が持てない場合は選択肢を提示してください。
# 構造化された取扱説明書データベース
[
{
“CardID”: “CardA”,
“Content”: “1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。\n2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。\n3. メインボード中央にあるユニットの固定レバーを押し下げ、フックから外してロックを解除します。\n4. ユニットを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。\n5. 新しいユニットをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。”,
“Metadata”: {
“InformationType”: “Instruction”,
“ProductVariant”: “製品X-100”,
“Component”: “CPUユニット”
}
},
{
”CardID”: “CardB”,
”Content”: “1. 製品の電源を切り、電源ケーブルをコンセントから抜きます。\n2. 背面のネジ(2箇所)を緩め、サイドカバーをスライドさせて取り外します。\n3. メインボード右側にあるモジュールの固定クリップ(両端)を押し下げ、ロックを解除します。\n4. モジュールを垂直に持ち上げ、スロットから取り外します。\n5. 新しいモジュールをスロットの切り欠きに合わせてセットし、逆の手順で固定します。”,
“Metadata”: {
”InformationType”: “Instruction”,
”ProductVariant”: “製品X-100”,
“Component”: “メモリ・モジュール”
}
}
]
# ユーザーの質問
「X-100のメインボードの部品を交換したいのですが、ロックの外し方を教えてください。」
資料6-2:実験3 – 結果(全文)
X-100のサポート担当です。お問い合わせありがとうございます。
ご質問いただいた「メインボードの部品のロックの外し方」についてですが、データベース上の該当部品として以下の2つがあり、それぞれ手順が異なります。
交換をご希望の部品は、以下のどちらでしょうか?
– CPUユニット(メインボード中央にある部品)
– メモリ・モジュール(メインボード右側にある部品)
対象の部品を教えていただければ、正しい手順をご案内いたします。
<終わり ー AI時代のトリセツ設計:AIは情報の「意味」を理解できるか?(資料編)>
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