ChatGPTとBing AIに、テクニカルライティングについて尋ねてみた

 「つたえる」という視点でAI翻訳活⽤法を考えたとき、ふと、生成AIはテクニカルライティングについてどの程度、知識があるのだろうか、理解しているのだろうかと気になってきました。そこで、生成AIがどの程度テクニカルライティングについて知識があるのか、ChatGPTとChatGPT を組み込んだBing AIに尋ねてみました。テクニカルライティングは、わたしがずっと長い間、勉強し続けてきたことですので、どんなことを教えてもらえるのか楽しみです。

ChatGPT、Bing AIへの質問

質問は以下のとおりです。なお、使用したChatGPTは、無料版の3.5です。

ChatGPT、Bing AIへの質問
Q:テクニカルライティングという英文のライティング手法がありますよね。その具体的な手法をすべて教えてくださいませんか。よろしくお願いします。
(このような対話型のAIの場合は、質問もこのように対話型にしたほうが効果的だと、どこかで耳にしました。)

ChatGPTの回答

■ChatGPTの回答
A:テクニカルライティングは、専門的な情報や技術的なコンセプトを明確かつ効果的に伝えるためのライティング手法です。以下に、テクニカルライティングの具体的な手法やガイドラインをいくつか説明します。

クリアな目的設定:
テクニカルライティングの最初のステップは、文書の目的を明確に設定することです。読者に何を伝えたいのか、何を期待しているのかを把握しましょう。

ターゲットオーディエンスの理解:
読者層を正確に理解し、彼らのバックグラウンド、知識レベル、関心事を考慮して内容を調整します。

シンプルな文体と言葉の選択:
複雑な言葉や冗長な表現を避け、できるだけシンプルで理解しやすい言葉を選びます。専門用語を使う場合でも、適切に説明を添えることが重要です。

構造化された文書:
文書を明確に構造化し、章やセクションを使って情報を整理します。見出しや箇条書きを活用して、情報の階層を示しましょう。

具体的な例と説明:
抽象的な概念や手順を具体的な例とともに説明することで、読者が内容を理解しやすくなります。

図表の使用:
複雑なデータや図解的な情報を図や表を使って視覚的に表示することで、読者の理解を助けます。

一貫性と正確性:
用語や記号、フォーマットに一貫性を持たせ、誤った情報を避けるために内容を検証しましょう。

要約と強調:
主要なポイントを要約し、重要な情報を強調します。目次や要約のセクションを提供することが役立ちます。

レビューとフィードバック:
文書を他の人にレビューしてもらい、フィードバックを受けましょう。他の人の視点からの意見は価値があります。

文法とスタイルの注意:
正しい文法とスタイルを保ち、一貫性を持たせます。スペルミスや文法エラーは避けましょう。

これらの手法を活用することで、テクニカルライティングをより効果的に行うことができます。また、特定のプロジェクトや文書の要求に合わせて手法を調整することも重要です。

ChatGPTの回答に対する感想

 基本的に、よく答えてもらっていると思います。特に、「クリアな目的の設定」と「ターゲットオーディエンスの理解」が最初に述べられるのは、いいですね。目的や対象となる読者層を決めないままに書き始めると、まとまりのない文になってしまうことが多いですからね。

 ちょっと余談になりますが、もう40年ぐらい前の昔のこと、私は、メーカーで海外向けの広告を担当していたことがありました。おわかりのように、新商品開発時には、担当する広告代理店に向けて、カタログなどの販促物を制作するためのプレゼンを行ないます。その際に、出席している開発者に、商品の対象購買層を尋ねるのですが、明快な答えが出てこないのです。そこで問い詰めると、毎回、「ぜ、ぜ、ぜーんぶ。オールエイジ」という答えが返ってくるのでした。良い時代でした。

すみません、横道にそれまして。しかし、その後に続く項目を見ると、ちょっと物足りなくて、がっかりしてしまいます。「シンプルで理解しやすい言葉を選ぶ」とか「文書を構造化する」とありますが、具体的にどのようなことをして書くのかがわかりません。また、それ以降の項目も、テクニカルライティングでなくても考えられそうなことばかりです。つまり、一般的なことしか言っていないような気がします。

 どうやら、ChatGPTは、ウェブ上にある関連ドキュメントを検索してきて、それを「無難に」まとめているようです。これを人間に例えるなら、一般的な説明が得意なベテラン社員とでもいうのでしょうか。これぐらいできれば、新入社員研修あたりでそれなりに使えそうですね。

Bing AIの回答

■Bing AIの回答
A:テクニカルライティングとは、技術的な内容を目的や読者に合わせて分かりやすく伝えるための文章作成の技法です。テクニカルライティングには、次のような手法があります。

ロジカルライティング:論理的な文章を書くための技法です。文章の目的と読者を明確にし、情報を収集し、ロジックツリーを使って情報を整理します。文章の構成や見出しは、ロジックツリーに沿って作ります1。

文書表現:分かりやすい文を書くための技法です。「一文一義」の原則に従って、一つの文は一つの内容に絞ります。接続詞は最小限に抑え、長い単語やフレーズは短い単語に置き換えます。修飾語や強意語は多用せず、抽象的な名詞は動詞に置き換えます2。

用字用語:統一感と正確さを保つための技法です。用語や略語は定義し、同じ意味の言葉は同じ表記にします。漢字やカタカナ、アルファベットなどの文字種は適切に使い分けます1。

図表作成:視覚的に情報を伝えるための技法です。図や表は文章と対応させ、必要な情報だけを盛り込みます。図表のタイトルやキャプション、凡例などは分かりやすく書きます1。

レイアウト:読みやすさと見栄えを高めるための技法です。ページサイズや余白、文字サイズやフォント、行間や段落間などを適切に設定します。見出しや箇条書き、強調表示などを使って文章を区切ります1。

以上がテクニカルライティングの主な手法ですが、他にも細かいポイントがあります。詳しくはこちらやこちらをご覧ください。


詳細情報:
1. mitsubishielectric.co.jp
2. bing.com
3. yamanouchi-yri2.com
4. yamanouchi-yri.com
(編注:3, 4の参照元は不明)

Bing AIの回答に対する感想

 ChatGPTよりも簡潔にまとめられています。まず、「技術的な内容を目的や読者に合わせて分かりやすく伝えるための文章作成の技法」というところはいいですね。
 次に、テクニカルライティングはロジカルライティングであるというところはどうでしょうか。これは、両者は基本的には別のものですよね。元々、テクニカルライティングは、論理的に書くことが基本ですので、改めてロジカルライティングと言って両者を混同するという混乱を招く必要はないのではないでしょうか。用語やその概念は適切に使用すべきです。皆さまはどう思われますか?
 テクニカルライティングは、そのルーツをたどるとすれば、1900年代前半のThe Element of StyleのWilliam Strunkまでさかのぼります(The Element of Styleは最初につくられたライティングガイドです!)。しかし、一般的には、戦後の産業革新の流れの中で、先端機器が人々の生活の中に広がり始めたころに確立されていったライティング技術だと言われています。それまでのトピック(技術)中心のライティングから、そのトピック(技術)の幅広いユーザーに、使い方をわかりやすく伝えるという需要が出てきたのです。

 次の「文書表現」のところでは、「一文一義の原則」や「長い単語やフレーズは短い単語に置き換える」、「修飾語や強意語は多用しない」、「抽象的な名詞は動詞に置き換える」とあります。これらは、いずれも英文テクニカルライティングでの「One topic, one sentence」や「Replace Long words with Plain words」、「Prune unnecessary flowery adjectives and adverbs」、「Avoid nominalizations」を日本語に翻訳したもののようです。これらについては、次回、説明することにします。「接続詞は最小限に抑える」というのは誤解される恐れがありますので、適切ではありません。ここも次回、説明します。

 ChatGPTの説明よりもBing AIの説明のほうが、具体的な記述が成されていて、わかりやすくなっています。ただし、そうは言うものの、「ロジカルライティング」と「接続詞は最小限に抑える」というところは、長くテクニカルライティングを学んできたわたしには、ちょっと引っかかるところがあります。また、Bing AIでも説明し切れていないところがあります。このあたりは、次回お話しさせていただきます。

「用字用語」のところに、「統一感と正確さ」、そして「用語や略語は定義する」、「同じ意味の言葉は同じ表記にする」とあります。これらも英文テクニカルライティングで注意すべき点です。「統一感と正確さ」、そして「用語や略語は定義する」、「同じ意味の言葉は同じ表記にする」は、それぞれ「Consistency and coherence」、「Word usages」、「Keywords」ですね。

最後に

 ChatGPTの説明よりもBing AIの説明のほうが、具体的な記述が成されていて、わかりやすくなっています。ただし、そうは言うものの、「ロジカルライティング」と「接続詞は最小限に抑える」というところは、長くテクニカルライティングを学んできたわたしには、ちょっと引っかかるところがあります。また、Bing AIでも説明し切れていないところがあります。このあたりは、次回お話しさせていただきます。

 

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