AI翻訳活用ガイド
監修: 中村 哲三
株式会社エレクトロスイスジャパン
AI翻訳 活用ガイド
【Vol.3】日本語固有の助数詞は適切に翻訳できるか
日本語固有の助数詞がAI翻訳で適切に翻訳できるかを確認します。助数詞は、「豚3匹」などのように、ものの数を数えるときに数字の後に着けるもので、「個」、「枚」、「回」、「組」などです。助数詞は、外国人の日本語学習者を戸惑わせたり、日本人も戸惑ったりするものもありますが、日本語の文章表現を豊かにする一要素であり、日本語と切っても切り離せないものです。
AI翻訳が助数詞にどこまで対応できるかを調べます。日英でAI翻訳にかけた後、それを英日のAI翻訳で日本語に戻してみます。英日のリバース翻訳のプロセスで、適切に日本語の助数詞が翻訳されるかを確認していきます。
注)例文で「原文」等の明記がないものは全てAI翻訳の結果です。
- 日英、英日共に良い結果(◎)を得られたもの
例文:大空に飛行機が三機飛んでいる。続きを読む>> - 日英は良い結果(◎)だったが、英日は駄目(✗)だったもの
例文:一筆啓上いたします。続きを読む>> - 日英、英日共に結果が駄目(✗)だったもの
例文:彼女は一抱えの薪を重そうに運んできました。続きを読む>> - 日英は良い結果(◎)で、英日で助数詞が翻訳できなかったもの(△)
例文:缶詰を一缶開けた。缶詰を一缶空けた。続きを読む>> - 日英は良い結果(◎)で、英日もまあまあの結果(○)だったもの
例文:回数も重なって、4回、5回目になってくると、スムーズに手続きできるようになります。続きを読む>>
【番外編】英語の助数詞的表現
【Vol.2】AI翻訳を上⼿に活⽤するための3つの基本ルール
情報は利⽤者が内容を理解して初めて⽬的を達成します。利⽤者が必要に応じて情報を理解可能な言語に変換し、適切に情報活⽤できることが、情報の価値を高めることに繋がります。多くの⼈がスマートフォンを利⽤する時代になり、情報利⽤者が⾃⾝でスマートフォンに搭載されている翻訳機能を用いて、原文の言語を問わずに自在に情報を得ることを想定する必要がでてきました。
AI翻訳を活⽤しても正しく内容を伝えるために、情報を「つかう」、「つたえる」という利⽤者の視点で、誤訳や訳抜けが発⽣しないように原⽂を書くことが必要になります。これは決して難しいことではありません。以下の3つの基本的なルールを押さえることで対応できます。
Rule 1. 論理的に、簡潔に、また正確に書く
普通にライティングするときも、翻訳するために原⽂を書くときも、まずこのルールを順守することが必要です。このルールを具体的に説明するために、「グライスの協調の原理」を紹介します。続きを読む>>
Rule 2. ⾔語に固有のメタファー(⽐喩)を避ける
2つの言語間でスムーズにコミュニケーションするためには、日本語/英語それぞれのネイティブにしかわからないメタファーを避ける必要があります。たとえば、以下の例文を見てみましょう。原文:あの政治家は腹が黒い。続きを読む>>
Rule 3. 和製英語や定着していないカタカナ⽤語は使⽤しない
日本語の中には、英語の原義から外れた和製英語があります。また、新たにカタカナ用語をつくりだすことを好む文化があります。和製英語を不用意に使うと誤訳が生じる原因になります。続きを読む>>
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【Vol.1】AI翻訳の翻訳品質を考える前に – 見落としがちなこと
論理性と固有名詞
英文は、論理のつながりで表現しますので、日本文ではあまり気にならないような非論理的な文や論理が飛躍した文を、英語に翻訳すると文が行き詰ってしまいます。機械翻訳では、おかしな英文となって表れますし、固有名詞を誤訳すると、伝えたい内容の誤りが生じます。 続きを読む>>
1文章中の主語について
機械翻訳を使って翻訳していると、何の脈絡もなしに主語が入ってきたり、その主語がほかの人称の主語と入れ替わったりします。なぜこんなことが生じるのでしょうか?日本語では、主語が明快に示されてないことが多々あるため、主語を省略して書かれることがあるためです。続きを読む>>
AI翻訳に誤訳があった場合の対処方法は?
AI翻訳は、流暢に誤訳することがあります。従来のルールベース機械翻訳(RBMT)や統計的機械翻訳(SMT)の場合は、誤訳したところは不自然な表現となり一目瞭然でしたが、AI翻訳の場合は、流暢に翻訳するので確認には記述内容の理解も必要です。この確認作業にはAI翻訳を活用して英日のリバース翻訳した日本語で確認する方法もあります。続きを読む>>
ひとことメモ
- AI学習データとして、既存TMを使うことは最適か? - エレクトロスイスジャパン 中村哲三
AI学習データとして、既存TMを使うことは最適か?
AI 自動翻訳にTM データを再利用しようとしても、その翻訳元データの内容に問題が多ければ、適切な翻訳文は生成できません。原文がわかりにくければ、誤訳されたものになるか、翻訳文もわかりにくいものしか出力されません。
翻訳できると、人が理解しやすい翻訳ができるとは同じではありません。AI 自動翻訳を活用するために、原文をしっかりと分析して、翻訳しやすい文に書き換えることが重要です。
ASD-STE100 (AeroSpace & Defence Simplified English)
・STE Maintenance Group (辞書編纂委員)、トレーナー
ISO TC37 (Language Resources)
・委員 言語共通のライティングルールを国際規格化に向けて整備中
監修:中村 哲三
株式会社エレクトロスイスジャパン
参考資料
- Stylistic Guidelines in Localization (SGL) ISO/PWI 24620-4 中村が進める、ライティングの国際 共通規格
- ASD-STE100 Simplified Technical English (AeroSpace and Defense: ヨーロッパ航空宇宙産業界)