[2022.4] わかりやすく、翻訳しやすい文を書くことを心がける
「わかりやすく、翻訳しやすい文を書くことを心がける」— これは、ごくごく当たり前のことですが、なかなか「わかりやすく、翻訳しやすい文」を書けないので、理解や翻訳に問題が生じたりします。
これからは、これまでの内容を広げて、AI翻訳だけではなく人にとっても翻訳しやすい文、つまり、わかりやすい文を書くことを検討していきます。この一年間、AI翻訳の翻訳品質を上げるために、GIGO (Garbage In, garbage out)として「翻訳しやすい日本語表現」を検討してきました。この「翻訳しやすい日本語表現」は、よく考えてみると、また同時に「わかりやすい、ライティングをするための表現」であることに気づきます。もちろん、「翻訳しやすさ」と「わかりやすさ」は部分的に異なります。しかし、共通しているところが多くの部分で見受けられます。たとえば、以下の文をご覧ください:
原文:今日は、イタメシでいいですか。
AI翻訳:Is it okay for me to do it today?
AI翻訳はまったく翻訳できていません。「イタメシ」が理解できていないのですね。
「イタメシ」とは「イタリア」+「めし」の「洋語+和語」、2単語の省略形であり、いわゆる「混種語」の合成語です。日本語では、カタカナ用語で、2単語の省略形を数多く造語してきました。たとえば、デジタルカメラをデジカメといったり、パーソナルコンピューターをパソコンと言ったりします。いずれも、日本人が好きな「2音+2音」の4音語です。これをカタカナ語以外にも広げて「混種語」(「洋語+和語」や「洋語+漢語」)で造語したのが「イタメシ」などです。
せめて、「イタメシ」が、食事のジャンルの「イタリアン」だったらどうでしょうか。
原文:今日は、イタリアンでいいですか。
AI翻訳:Is it okay to be Italian today?
これもだめでした。「イタリア料理」と明示したらどうでしょうか。
原文:今日は、イタリア料理にしませんか。
AI翻訳:Would you like to cook Italian food today?
「しませんか」というところ、これは「する」という動詞ですので、あまりにも意味が抽象的で広すぎます。当然のことながら、AI翻訳は「料理する」と解釈してしまいました。そこで、具体的な行為、つまり動詞の「食べる」に置き換えてみます。
原文:今日は、イタリア料理を食べませんか。
AI翻訳:Would you like to eat Italian food today?
ご確認いただきたいのは、ここまで手間がかかったのはAI翻訳のせいではないということです。原文に問題があったら、つまり、原文がわかりにくかったら、AI翻訳に限らず誰であっても誤解し、誤訳します。最初の原文の「イタメシ」は、AI翻訳にとって、または初期の日本語学習者にとっては、見慣れない言葉だったでしょう。また、2つ目の原文の「イタリアン」は、「イタリア人」や「イタリア語」という意味もある多義語でしたので、この文が書かれた背景を知らなければ、「イタリアン」が何を指しているのかわからなかったでしょう。そして、3つ目の原文の「する」という抽象的な動詞では、なにをしたいのかわからなかったでしょう。
これで適切に翻訳してほしいというのは、AI翻訳や翻訳する人にとって理不尽な要求です。せっかくのAI翻訳を活用したいのであれば、また、翻訳する人に適切に翻訳してほしいのであれば、わかりやすく、翻訳しやすくなるように原文を書く必要があります。
そういった意味では、ASD(ヨーロッパ航空宇宙産業会)の私が属しているグループのASD-STE100 Simplified Technical English、いわゆる「シンプリファイド イングリッシュ ルール」は、多義的な解釈ができないように、つまり「一文、一義」となるように、「一語、一義で一品詞」を心がけています。このシリーズの中でも、ASD-STE100によるライティングのご紹介ができたらと思っております。