【米国発】機械翻訳の後編集(MTPE):このQAプロセスが重要な理由

 機械翻訳(MT)ソフトウェアは、1968年にSYSTRANによって開発されて以来、長い道のりを歩んできました。最新のプラットフォームを使用すれば、企業の重要なドキュメントを数秒で正確かつ効率的に翻訳できます。これらの驚くべき機械翻訳の精度は、企業の言語翻訳アプローチを変革しました。
 しかし、豊富な機能を備えたMTプラットフォームであっても、機械翻訳の後編集(MTPE)は最高の翻訳品質を達成するために依然として必要です。

主なトピック
機械翻訳の後編集(MTPE)とは
MTとMTPEの違いは何か
MTPEを実行する適任者
HITL (Human-in-the-Loop)機械翻訳とは
Expert-in-the-Loop翻訳とは
人翻訳だけにせず、機械翻訳を活用する3つの理由
MTPEを活かすベストプラクティスとは
機械翻訳の活用度向上に重要なMTPEの役割

 MTPEは、機械翻訳と人翻訳の両方の長所を享受するハイブリッドなアプローチと捉えることができます。プロの翻訳者が、機械翻訳されたコンテンツを編集する場合に、ゼロから翻訳を始める場合よりも労力を節約できるといった事例が示すだけではなく、機械翻訳の素の結果と比較しても数多くの利点をもたらすことを示しています。
 この記事では、MTPEが翻訳精度向上になぜ重要なのか、そしてそれを翻訳プロジェクトで実施していく方法について検討します。

機械翻訳の後編集(MTPE: Machine Translation Post-Editing)とは

 MTPEは、MTソフトウェアによって生成された翻訳結果を人が編集するプロセス、あるいは、単にポストエディットと呼ばれるプロセスです。業界を問わず、機械翻訳に関する話題でMTPEが広く取扱われているのは、MT出力の効率性と人による翻訳がもたらすニュアンスを組み合わせるためです。翻訳プロジェクトで、質の高い完全に正確な翻訳結果を得るために必要な作業が、ライトポストエディットだけだとしても、両方の作業が必要です。
 翻訳プロセスにMTPEを実装する流れを考えます。ます最初にオリジナルのコンテンツを作成します。その内容をスタイルガイドに照らし合わせて確認し、すべてが意図通りであれば、そのコンテンツをMTソフトウェアに送信してから、人の翻訳者が専門分野に則して編集し、正確性を担保します。翻訳者は、機械翻訳、翻訳メモリ、単語とフレーズの一致、およびその他の要素を確認して高品質な出力を保証します。これは、MT翻訳ソフトウェアをトレーニングするプロセスでもあり、AI対応の機械翻訳エンジンを使用している場合は非常に重要です。

このプロセスを3つの簡単なステップで要約すると、次のようになります。
○ステップ1:コンテンツがMTソフトウェアに入力され、ソース言語がターゲット言語に翻訳されます。
○ステップ2: MTソフトウェアのアルゴリズムは、スペルの間違い、文法の間違い、またはその他の矛盾を校正します。
○ステップ3:翻訳者が素のMT出力のテキストを確認し、必要に応じて編集します。翻訳者は、トーン、ブランドのルール、使用すべき用語などスタイルガイドに則って、一貫性をチェックできます。翻訳者は、後編集のこのプロセスで、ローカリゼーションプロセスを開始することができます(または、MTソフトウェアに蓄積した翻訳メモリによって提供された結果を基に作業を完了させることができます)。

 翻訳作業におけるMTエンジンの役割は、まだ人による後編集の必要性を取り消せていない場合もありますが、翻訳者の業務を再定義することになりました。翻訳者は、高品質の結果を得るために何時間も文書を一語ずつ翻訳する必要がなくなりました。そのような肉体労働は貴重な時間と資源を浪費します。その代わり、翻訳者は高速で正確なMTソフトウェアを使用し、後編集で最終的な文書の完成度を磨くことに集中できるようになり、膨大な時間を節約できます。

MTとMTPEの違いは何か

 機械翻訳(MT)は、高品質の翻訳を作成するための最も迅速で、費用対効果が高く、最も価値のある方法の1つです。市場で最も優れた機械翻訳エンジンは、迅速な結果を提供することができます。MTは一貫した出力品質も提供します。企業翻訳の目標の1つは、特定の言語ペア間の一貫性を保持することであり、これは大きなメリットです。
 あらゆる業界の企業は、後編集とMTエンジンのパワーで、大きな恩恵を受けることができます。MTエンジンは、コンプライアンスの問題を最小限に抑えるのに十分な安全性を備え、業界固有の用語を組み込むのに十分な正確性とカスタマイズ性を備え、後編集の生産性を最大限確保するために十分な迅速性を備えています。これはMTソフトウェアで全てを完結できているように見えるかもしれませんが、重要な点は、機械翻訳の後編集作業のための十分な時間を確保し、翻訳結果の改善ができるという点です。
 MTPEは、機械翻訳されたコンテンツが自社のブランド基準を満たしていることを保証するQAタスクです。 ニーズに応じて、次の翻訳プロジェクトで使用できように、MTPEには主に2つのタイプがあります。
 完全後編集(FPE:Full post-editing)では、ブランドディング、スタイル、一貫性のすべての要素を完全に編集します。これは、ライトな後編集(LPE: light post-editing)よりも掘り下げた詳細な編集です。LPEは、新規に翻訳された文書を対象に、明白な間違いだけをチェックするプロセスです。FPEほど深いプロセスではありません。

どちらの手法も、翻訳の目的によって、QAプロセスに求められる品質に応じて適切に実行することが重要です。

MTPEを実行する適任者

 ネイティブもしくは言語エキスパートがMTPEを実行できるようにすることは、企業にとって理想的です。社内ドキュメントや、製品・サポート情報などのローカリゼーションの取り組みには、多くの提供価値があり、ネイティブまたは言語エキスパートは、最も効果的にこれらの後編集の遂行を行うことができる適任者です。
 これらの担当者が社内にいる場合は、MTPEの業務をアサインできると、最もスムーズな業務移行が可能になります。すでに自社ブランドのスタイルガイドラインを知っており、組織に精通もしており、一貫したメッセージングを保つことができます。
 社内に適任者がいない場合でも、外部リソースを活用することを前提に機械翻訳エンジンを利用して、MTPEプロセスを実行できます。自社の詳細な翻訳スタイルガイドがあればそれに沿った、最良な結果を得ることもできます。

HITL (Human-in-the-Loop)機械翻訳とは

 Human-in-the-loop (HITL)機械翻訳は、機械翻訳の後編集を行う一つの方法です。この用語は単に、翻訳の専門家がプロセスに不可欠であることを意味します。HITLは、機械翻訳の力と、後編集の段階で人間の知性が提供する専門知識と高価値の提供を組み合わせたものです。このプロセスに関わる担当者は、MTソフトウェアとAIモデルをさらに改善し、機械翻訳をより高品質な翻訳とするために重要です。

Expert-in-the-Loop翻訳とは

EITL(expert-in-the-loop)翻訳方式は、HITLと密接に関連していますが、より言語に対する専門性に特化して、これまでの機械翻訳の出力ルールを基づいて、出力ルールを変更しながら、これからの翻訳結果を改善していくアプローチです。

人翻訳だけにせず、機械翻訳を活用する3つの理由

人間の編集者が機械翻訳されたコンテンツを見なければならないとしたら、MTソフトウェアを活用するポイントは何でしょうか?機械翻訳が組織レベルの翻訳プロセスに不可欠である理由は3つあります。

1.翻訳時間の短縮
2.より高品質な成果
3.セキュリティ対策の強化

1. 翻訳時間の短縮

 高品質で安全で強力な機械翻訳エンジンへの投資にはリソースが必要です。それでも、翻訳プロセスでMTソフトウェアを使用する利点は多数あり、後編集のQAタスク(MTPEなど)を簡単に実行できます。これまで、ストレスもかかる多くの時間を費やして、ドキュメントをターゲット言語に手動で翻訳していたチームでさえも、その時間を使って後編集にフォーカスすることでシステム全体をさらに革新することができます。

2. より高品質な成果

 時間の節約は、リソースの節約よりも重要です。社内の専門家でもフリーランサーでも、翻訳者が単語単位の翻訳プロセスにすべてのエネルギーを消費せずに、軽い後編集でもドキュメントの価値を高めることに専念できる精神的な余裕が生まれます。機械翻訳されたコンテンツを編集し、ローカライぜーションを行い、スタイル等の確認を行うなど、すべてのコンポーネントが一貫していることを確認できます。

3. セキュリティ対策の強化

翻訳業務の進め方とポリシーが、コンプライアンスの観点から混乱を招くこともあります。多くの企業が、すべての翻訳作業において、企業間の秘密保持契約や法規制に遵守し、広範なセキュリティ対策を講じることが非常に重要であるということを認識する必要があります。
現在の翻訳業務では、依然として多くの課題が残されたままの状態であり、ヒューマンエラーが発生する可能性は増加するばかりです。
 安全なMTソフトウェアとMTPEによる品質向上を組み合わせることで、セキュリティ対策を強化することができます。これは、組織の持続的な維持を保つために重要です。

MTPEを活かすベストプラクティス

 翻訳ワークフローにMTPEを実装するには、最適な結果を得るために次のベストプラクティスを念頭に置いてください。

  • ソーステキストをクリーンに保つ:
    機械翻訳されたコンテンツは、原文の品質と同じ程度にしか翻訳できないので、原文の誤りを修正し編集してください。
  • 多言語の自社スタイルガイドの作成 :
    複数の言語を使用する組織では、スタイルガイドにはその違いを反映させる必要があります。ガイドを作成して、コンテンツの基盤を強固なものにします。
  • パフォーマンスを定期的に評価:
    テクノロジーの優れた点の1つは、テクノロジーが常に進化していることです。翻訳プロセスに言語のエキスパートが参加することで、品質を確保するためにMTソフトウェアの精度向上を持続的に改善していくことが可能になります。

機械翻訳の活用度向上に重要なMTPEの役割

 機械翻訳(MT)は新しい発明ではありません。最初のMTソフトウェアが開発され、翻訳プロセスを合理化したのは90年代半ばからのことです。MTは基本的に翻訳メモリを搭載しており、翻訳をより早く、より安くするために設計されています。
 MTソフトウェアは様々な業界にとって価値のある存在であり続けますが、翻訳者は主要なポストエディターリソースとして後編集プロセスにとって重要な役割を担っています。前述したように、これは高度な翻訳サービスに重要な、Expert-in-the-Loop翻訳アプローチと呼ばれます。Expert-in-the-Loop翻訳方式では、ネイティブまたは言語専門家がポストエディターとなり、機械翻訳されたコンテンツをレビューし、その出力に基づいてソフトウェアの挙動を改善します。機械翻訳の後編集は、これまでの翻訳業務を完全に変えていくことが可能であり、ニューラル機械翻訳機能により、機械翻訳が向上するにつれて、後編集はさらに簡単になります。
 翻訳の後編集作業は、将来の翻訳出力を大幅に改善します。画期的なソフトウェアソリューションを改良することは、ソリューション自体と同様にプロセスに不可欠です。ソフトウェアの挙動が意図したとおりになるよう改良することで、翻訳者は一語一語翻訳から焦点を移し、伝えるべき情報の内容に集中できます。翻訳業務全体のさらなる効率化を進めるために、MTPEが重要な役割を果たします。

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 SYSTRANのニューラル機械翻訳(NMT)ソリューションは、市場で最も機能の豊富なニューラル機械翻訳ソフトウェアの1つです。正確な翻訳品質を実現し、言語ペア、辞書、業界固有の用語集を多数含むライブラリと、翻訳メモリ機能も装備しています。
 MT業界で50年以上の歴史と幅広い機能を備えたSYSTRANは、費用対効果が高いソリューションです。この強力なポスト編集フレンドリーな機械翻訳ソリューションを体験することができます。
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