日常業務でAI翻訳を活用する上での注意点
AI翻訳の活用でクラウドサービスの利用は、申し込むとすぐに使用できてお手軽ですが、セキュリティに関して注意が必要です。日常業務で取扱う情報は、社外に公開できない機密情報であることがほとんどです。自社の製品開発に関わる情報や、発表前製品の情報、顧客情報などは非公開情報です。また、お客様との機密保持契約に基づいて提供を受けた情報も社外に出すことが契約違反にもなり、重大な問題になる可能性があることの認識が必要です。また、クラウドサービス上で翻訳した事実が自社の関心事を示している可能性もあり、これらの情報が社外に流出することになります。
AI翻訳のクラウドサービスを利用する場合には、セキュリティ要件を満たしているサービスなのかの確認が重要です。しかし、要件を満たしているからといっても、クラウドサービスに預けたデータの管理は、サービス事業者に委ねることになり、自社の都合でデータを消去したりできないという事実を認識しておく必要はありそうです。
こんなことは起きていませんか?
海外の事例をご紹介します。IT部門が全社のアクセスログを精査した結果、膨大な量の社外秘情報が、セキュリティ要件が不確かな無料サイトで翻訳されていたことが判明した例があります。そのIT部門は即アクセスできないようにブロックをかけましたが、社外秘情報や個人情報が含まれた原文・訳文の情報を取り戻すことはできず、以下のようなリスクを抱えることになりました。
- データ収集リスク
- 社外秘漏洩リスク
- 個人情報の国外提供の法的リスク
クラウドサービスを利用する場合、そのクラウドベンダーが第三者のAI翻訳サービスを利用してサービス提供しているケースもあります。ユーザーはクラウドベンダーとサービス契約しますが、この場合、実際のデータは第三者のサーバーに転送されることになります。情報漏えいなどの問題が発生した場合、契約上の違反は追求できても、漏洩したデータを完全に取り戻すことはできません。このことは、クラウドサービスに限らず、人手による翻訳サービスにおいても同様のことは起こり得ます。翻訳ベンダーとは機密保持契約を締結したとしても、フリーランスの方のデータ管理については同様で、委託先翻訳ベンダーのデータ管理を自社でコントロールすることは困難です。

セキュリティが確保されたAI翻訳の活用
自社の管理下にAI翻訳を設置することで、必要な時に必要な箇所を何度でも安心して翻訳し確認できるようになります。そして、何をいつ翻訳したのかの履歴情報や、原文・訳文の情報など、データの発生から消去まで、常に自社の都合で実行できるようになります。
次回以降のコラムで、実際にセキュアなAI翻訳基盤を構築していくためのポイントについてご紹介していきます。自社での構築検討にご活用ください。
<終わり – 第1回 見落としがちなセキュリティ>