AI翻訳 vs 生成AI翻訳:その違いとは?

 近年、生成AIの普及が進み、業務への活用が一般的になってきました。文章や画像、ソースコードなど、さまざまなコンテンツを生成できるため、翻訳にも活用するユーザーが増えています。一方で、従来のAI翻訳も精度や利便性が向上し、より使いやすくなっています。では、業務に翻訳を導入する際、翻訳に特化したツールを使用するのと、生成AIで兼用するのでは、どちらが適しているのでしょうか?
 本記事では、シストランのAI翻訳と生成AI翻訳の技術的な違いを解説し、効果的な使い分け方法についてご紹介します。

目次

技術的な違い

同じくTransformerモデルを採用

 シストランのAI翻訳はニューラル機械翻訳(NMT) に基づく技術であり、「Transformer」モデルを採用しています。「Transformer」は機械翻訳の進化の中で生まれた技術で、長文における単語同士の関係を捉えることができるため、文法やニュアンスを考慮して高精度な翻訳が可能になります。現在では生成AIにも「Transformer」が活用されており、例えばChatGPTの「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」の略です。

AI学習の方法が違う

 シストランのAI翻訳は、翻訳に特化したAIモデルであり、学習の際には原文と訳文をセットにした対訳データを使用します。そのため、比較的「制限されたデータ」をもとに翻訳パターンを習得し、学習データ通りに忠実な翻訳を提供できます。
 一方、生成AIは、大量のテキストデータを言語ごとに学習し、大規模言語モデル(LLM)を構築します。このモデルは膨大なパラメーターを持つため、細かな違いを捉えやすく、流暢な文章を生成する能力に優れています。
 しかし、生成AIが翻訳を行う場合、まず英語の文章全体の意味を「中間体(ベクター表現)」に変換し、その後、日本語で文章を再構築するプロセスを取ります。このアプローチでは、大規模言語モデル内の表現が多様である一方、翻訳パターンの明確な学習が行われないため、次のような課題が生じることがあります。

  1. 文単位・用語単位での訳のズレ
  2. 一貫性の欠如
  3. 原文にない情報が翻訳結果に含まれる可能性

 このように学習方法が、シストランのAI翻訳と生成AIでは大きく異なり、それぞれ得意とする領域が異なります。

利用時の違い

シストランのAI翻訳と生成AIの技術的な特徴を理解したところで、次に具体的な利用場面での違いを見ていきましょう。

一貫性とランダム性

シストランのAI翻訳:同じ原文を入力すれば、常に同じ訳文が出力されます。訳文をカスタマイズして保存すれば、次回その訳文が反映されます。

生成AI:同じ原文を入力しても、毎回同じ訳文が出力されるとは限りません。プロンプトを工夫して表現を調整したとしても、次回以降に同じ訳文を再現することが難しい。

 正式な文書を翻訳する際は、一貫性が求められ、誤解を招かないことが重要です。そのため、シストランのAI翻訳が適しています。一方、非公式な場面で内容を大まかに理解するのが目的であれば、多少ランダム性があっても問題にならず、生成AIを活用するのも十分な選択肢となります。

セキュリティの考慮点

SaaS(Software as a Service)型のAI翻訳や生成AIでは、情報漏洩のリスクがあります。個人情報、公開前の財務情報、技術開発情報など機密性の高い情報を扱う企業では、データが外部に出ないクローズドな環境が求められるため、翻訳ツールの選択は慎重に行う必要があります。

シストランのAI翻訳:55年以上にわたり米国防衛機関で採用された実績があり、強固なセキュリティ対策を備えています。さらに、オンプレミス環境での安定運用にも対応可能です。

生成AI:機能やモデルが頻繁に更新されるため、クラウドベースでの利用が一般的であり、オンプレミス環境での運用はまだ十分に確立されていません。

機密性の高い業務では、シストランのAI翻訳の方がセキュアな運用が可能です。生成AIを利用する場合は、データの扱いに注意が必要です。

専門分野の翻訳精度

汎用的な内容については、AI翻訳と生成AIのどちらも流暢な翻訳が可能です。では、専門分野ではどうでしょうか?

シストランのAI翻訳:業務用機械の設置・整備マニュアルなど、専門分野のデータが非公開されている場合、自社データを活用してAIモデルをカスタマイズすることで、高精度な翻訳が可能になります。

生成AI:法律条文や財務諸表など、インターネット上に大量の関連データが公開されている分野では、高精度な翻訳が期待できます。

専門分野の翻訳では、一貫性の確保や情報セキュリティが求められる場合が多くあります。その場合は、シストランのAI翻訳が適しています。

構築コストの違い

 自社クローズド環境で翻訳システムを導入する際、ハードウェアや運用コストの違いも重要なポイントです。

シストランのAI翻訳:翻訳に特化した軽量なモデルのため、CPUのみで動作可能。サーバーの負荷が低く、導入コストや運用コストが抑えられる。消費電力も少なく、環境に優しい。

生成AI:大規模な言語モデルのため、GPUや専用の高性能ハードウェアが必要。サーバー環境の整備に多額のコストがかかり、消費電力も増加。

翻訳スピードの違い

 大量のデータを翻訳する必要がある場合、どちらがより速く処理できるのでしょうか?

シストランのAI翻訳:軽量なモデルを採用しているため、大量のデータでも高速に翻訳できます。また、業務で頻繁に使用されるOfficeファイル(Word、Excel、PowerPoint)、PDF、InDesignなどのファイル形式に対応しており、レイアウトを維持したままで一括翻訳できるため、さらに業務効率を向上できます。

生成AI:大規模言語モデルを使用しているため、翻訳処理には比較的時間がかかります。現時点ではファイル翻訳の際にレイアウトを維持できず、テキストのみの処理となるため、実務での活用には工夫が必要になります。

まとめ

生成AIは、汎用的な内容の翻訳や、大まかな内容を把握する目的の場面に適しています。翻訳以外にも文章生成や要約など、幅広い用途に活用できる点が強みです。

一方、シストランのAI翻訳は、一貫性や専門性が求められる業務に最適です。対訳データを活用し、専門分野の高精度な翻訳が可能なうえ、オンプレミス環境での運用により機密情報の安全性を確保できます。また、軽量なモデルのため低コストで運用でき、大量のデータやレイアウトを維持したままのファイル翻訳にも高速で対応可能です。

多言語での情報提供基盤の構築を

 シストラン社は、1968年に世界初の自動翻訳開発企業として米国カリフォルニア州サンディエゴ市で創業されました。1986年に、本社をフランス・パリ市に移転し、2019年には、国内のお客様をサポートするため、日本支社を設立しました。これまでのイノベーションとして、世界初の「オンライン翻訳ポータル」や、ハーバード大学と共同で世界初の「ニューラル翻訳システム」を開発しました。シストランが提供するAI翻訳ソリューションは、米国政府をはじめとする各国政府や国際機関、また、フォード社、アドビシステムズ社、ファイザー社といった世界をリードする大手グローバル企業でも多数採用されています。
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