ChatGPTに、ローカリゼーションの品質改善について聞いてみた

 ChatGPTにローカリゼーションの品質改善について、質問をしてみました。ローカリゼーションの品質改善をどのように進めるのかは、皆さまの関心事ではないでしょうか。しかも、日本の環境では、ヨーロッパ系言語やアジア系の言語の品質を適切に管理することなど至難の業です。

ChatGPTへの質問

はたして、どのくらいChatGPTは使える解答を出してくれるのでしょうか。ChatGPTに以下のような質問をします。なお、使用したChatGPTは、無料版の3.5です。

ChatGPTへの質問
Q:ローカリゼーションの品質を向上させたいです。しかし、スタッフには、多国語に堪能な人はいません。あなたなら、どうやってローカリゼーションの品質を上げますか?

ChatGPTの回答を見る前に

 ChatGPTの回答を見る前に、以前、私がメーカーでローカリゼーションを管理していたころは、以下のようなやり方をしていました(もちろん、これが模範解答というつもりはありません。ちょっと古臭いかもしれませんが、皆さま方のご参考にしていただければと思います。)。

・多言語の用語集やローカリゼーションの内容チェックも、現地法人の営業に依頼していました。新機能の名称やボタン名などは、現地法人の営業にしかわかりませんので、そういったことは、もちろん、説明の内容の正誤も含めて依頼したほうが、手っ取り早いし、確実だからです。その時のポイントは以下のとおりです:

  • LSPから現地法人の営業へチェック依頼の流れをつくる:現地のLSP(Language Service Provider)からダイレクトに現地法人の営業にチェックを依頼するようにします。現地のことは隣人同士でやってくれというわけです。
  • 現地法人の営業が仕事しすぎないように依頼する:現地法人でチェッカーを指定すると、どうしても彼/彼女は翻訳チェックをしすぎてしまいます。ほら、私はこれだけ仕事をしましたよ、私はこんなに有能なんですよ、となるからです。そうなると、せっかく作ったTM(翻訳メモリー)の意味がなくなります。結果として、毎回、新規翻訳が増えて、翻訳コストが上がってしまいます。ということで、最初の時点で、TM(翻訳メモリー)のことを現地法人の皆さんに理解してもらい、文章の推敲はしないように依頼する必要があります。

・言語が理解できない本社スタッフがやるべきこともあります。それは、翻訳がスタートした後に入った変更や修正箇所のチェックです。そういった変更や修正箇所は、納品された翻訳に反映されていないことがあります。こういったところだけは、本社スタッフが確認するようにします。もちろん、翻訳と一緒に納品されたTM(翻訳メモリー)の該当箇所が修正されているかもチェックする必要があります。LSPは、最後の修正箇所をハンドで修正するので、往々にして、TM(翻訳メモリー)に反映されていないことがあります。

 私が思いつくのは、だいたいこれぐらいです。皆さん方はもっとスマートなやり方をされているかもしれません。その場合は、ご容赦ください。

ChatGPTとのやりとりから見えてくるもの

さて、ChatGPTから何か学べるところはあるのでしょうか。ChatGPTから、以下のような対処法を提案してもらいました。

■ChatGPTの回答
A:ローカリゼーションの品質を向上させるために、以下のアプローチを検討することができます。
ローカライゼーションパートナーの利用: 多言語対応や文化に精通したローカライゼーションパートナーを探しましょう。彼らは翻訳や文化適合性の専門知識を持っており、高品質なローカリゼーションを提供してくれます。
クラウドソーシングの活用:クラウドソーシングプラットフォームを利用して、多言語スタッフや専門の翻訳者を探すこともできます。さまざまな国や地域の専門家を集めることで、品質の高いローカリゼーションを実現できます。
翻訳ツールの活用:翻訳支援ツールやCATツール(Computer-Assisted Translation)を導入することで、翻訳の一貫性や効率性を向上させることができます。これらのツールは、翻訳メモリや用語ベースを活用して、再利用可能な翻訳データを作成し、品質を向上させます。
ローカライゼーションガイドラインの作成: ローカリゼーションガイドラインを作成して、翻訳者やローカリゼーションチームに提供しましょう。これにより、ブランドの声やスタイルガイド、文化的なニュアンスに関する指針を明確にすることができます。
品質管理のプロセスの確立:品質管理プロセスを導入して、翻訳の品質を確認し、改善する仕組みを作りましょう。フィードバックループや品質評価の方法を定期的に行うことで、品質の向上を図ることができます。
 これらのアプローチを組み合わせることで、ローカリゼーションの品質を向上させることができます。また、専門知識を持つローカリゼーションパートナーと協力することで、より効果的な結果を得ることができるでしょう。

 だいたい、妥当なことを提案してくれています。まず、「ローカライゼーションパートナーの利用」や「翻訳ツールの活用」が基本になりますね。「ローカライゼーションガイドラインの作成」や「品質管理のプロセスの確立」も必要でしょうね。「ローカライゼーションパートナーの利用」というところは、もう少し掘り下げて聞いてみたいですね。

■ChatGPTへの質問
Q:あなたは「ローカライゼーションパートナーの利用: 多言語対応や文化に精通したローカライゼーションパートナーを探しましょう。彼らは翻訳や文化適合性の専門知識を持っており、高品質なローカリゼーションを提供してくれます。」と回答してくれましたが、具体的にはどのようにするのでしょうか?具体的なやり方をおしえてください。

■ChatGPTの回答
A:もちろんです。ローカリゼーションの品質向上のために、具体的な手順を以下に示します。

ローカライゼーションパートナーの選定:専門的なローカライゼーションパートナーを探しましょう。翻訳や文化適合性に精通しており、過去の実績を持つことが重要です。インターネット上で検索したり、業界関連のコミュニティやフォーラムで勧められるパートナーを探すことができます。
ニーズと目標の明確化:ローカリゼーションの対象となるコンテンツや製品、サービスを明確にし、どの国や地域に焦点を当てるかを決定します。ローカリゼーションの目標も設定しましょう。たとえば、翻訳のみでなく、文化的な違いにも配慮した内容の提供など。
コミュニケーションと調整:パートナーとのコミュニケーションを円滑に行いましょう。プロジェクトの詳細や要件、期待する品質基準などを共有します。翻訳に関する疑問点や誤解を防ぐため、文化的なニュアンスや特定の表現についてのガイドラインを提供します。
翻訳と校正:パートナーによる翻訳を実施します。この際、翻訳だけでなく、文化的な違いや地域特有のニュアンスを考慮した翻訳が重要です。翻訳が完了したら、校正を行い、誤字脱字や不自然な表現を修正します。
文化適合性の確認:ローカライズされたコンテンツが、対象の地域や国の文化に適合しているか確認します。敏感なトピックや言葉遣いについても検討します。
テストとフィードバック:ローカライズされたコンテンツを対象地域のユーザーグループに公開し、フィードバックを収集します。
ユーザーからのフィードバックを基に、必要な修正や改善を行います。
最終確認と展開:ローカライゼーションされたコンテンツが最終的な品質基準を満たしていることを確認します。必要に応じて、複数の言語や地域に展開する際には同じ手順を繰り返します。
継続的な改善:フィードバックや分析を通じて、ローカリゼーションの品質を常に評価し、改善を加えるプロセスを確立します。
 以上の手順を実行することで、多言語に堪能なスタッフがいない場合でも、高品質なローカリゼーションを実現することができます。

 一つひとつはもっともらしいのですが、どうも具体的な内容が欠けています。そして、少し冗長な感じがします。最初に私が例示したような具体的な手法がちょっとでもあったらいいのですが。再度、質問を変えて尋ねてみました。

■ChatGPTへの質問
Q:多国語に堪能でないスタッフに、なんとか多国語の品質チェックをしてもらいたいのですが、どうしたらいいでしょうか? また、それを可能にするツールはないものでしょうか?

■ChatGPTの回答
A:多国語のローカリゼーション品質を向上させるためには、以下の手段を検討することができます。多国語に堪能でないスタッフが関与する際には、ツールの活用も助けになるかもしれません。クオリティチェックガイドラインの作成: 多国語の品質を向上させるために、簡潔で明確な品質基準やガイドラインを作成します。これにより、スタッフがどのポイントに注意を払うべきかを理解しやすくなります。

翻訳メモリツールの活用:翻訳メモリツールは、以前の翻訳内容を再利用することで品質を維持するのに役立ちます。繰り返しの箇所を正確に翻訳するための支援ツールとして活用できます。
 文法・スペルチェックツールの使用:多国語の品質向上には、文法とスペルのチェックが重要です。一般的な文法ミスやスペルミスを検出するツールを利用して、基本的なエラーを減少させることができます。
クロスチェック: ローカリゼーションチーム内でメンバー同士の相互チェックを行います。もしスタッフが多国語に堪能でなくても、他のチームメンバーがレビューし、フィードバックを提供することで品質を向上させることができます。
専門家のコンサルテーション:ローカリゼーションにおける専門家やネイティブスピーカーに対して、コンサルテーションを依頼することも一つの方法です。専門家のアドバイスや指摘は、品質向上に役立つでしょう。
機械翻訳ツールの利用:多国語の品質向上において、機械翻訳を活用することも考えられます。機械翻訳を基にしてスタッフが修正や調整を行うことで、効率的に多言語対応を進めることができます。
品質評価ツールの導入:品質評価ツールは、翻訳されたテキストを評価し、自動的に品質スコアを付けることができるものです。これにより、スタッフが自身の翻訳を評価し改善する手助けとなります。
 ツールの選択肢としては、Google の「Google 翻訳」やDeepLなどの機械翻訳ツール、文法・スペルチェックツール(例: Grammarly)、品質評価ツール(例: TAUS Quality Dashboard)などがあります。ただし、ツールはあくまで支援ツールであり、専門性や人間の判断力が必要なケースもあることに注意してください。 

「それを可能にするツール」と具体的な「ツール」という名称を示したので、今度は、ツールに関連した内容になってきました。しれっと「ツールの活用も助けになるかもしれません」などと述べるのには、ちょっと人間味があって、好感が持てます。「クオリティチェックガイドラインの作成」や「文法・スペルチェックツールの使用」、「機械翻訳ツールの利用」、「品質評価ツールの導入」は参考になります。

「文法・スペルチェックツール」はどういうものを指しているのか興味があったので、ついでに聞いてみました。

■ChatGPTへの質問
Q: どうもありがとうございました。「文法とスペルのチェック」ツールにはどのようなものがありますか?

■ChatGPTの回答
A:文法とスペルのチェックを行うツールはいくつかあります。以下にいくつか代表的なツールを挙げてみましょう。
Grammarly:Grammarlyは非常に人気のある文法およびスペルチェックツールです。Webブラウザの拡張機能やデスクトップアプリを提供し、様々な文書やテキストエディタで文法ミスやスペルミスを検出して修正の提案をしてくれます。
ProWritingAid:ProWritingAidは、文法、スペル、スタイル、構造などのさまざまな側面に焦点を当てた文書改善ツールです。文章の洗練度や一貫性を向上させるための機能が多く含まれています。
Hemingway Editor:Hemingway Editorは、文書の読みやすさを評価し、長い文や複雑な表現をシンプルにするためのツールです。文章のクリアさを向上させるのに役立ちます。
WhiteSmoke:WhiteSmokeは文法やスペルチェックに加えて、スタイルや構造の改善にも焦点を当てたツールです。多くの種類の文書タイプに対応しています。
 これらのツールは、多くの場合、プレミアムバージョンや有料プランを提供しており、より高度な機能や詳細な解析を利用することができます。無料版も提供されている場合がありますが、機能制限があることもあるので、自身のニーズに合ったツールを選ぶ際に注意が必要です。
 また、文法とスペルのチェックツールはあくまで補助ツールであり、全てのエラーを完璧にキャッチできるわけではありません。特に多国語の翻訳の場合、文脈によって正しい表現や専門用語が必要なこともありますので、ツールの結果を慎重に検討することが大切です。

Grammarlyなどのツールを挙げてくれたのですが、これらは英語専用ではなかったでしたっけ?
そこで、以下の質問をしました。

■ChatGPTへの質問
Q: どうもありがとうございました。こういったツールは、英語専用なのでしょうか、それとも、英語以外もあるのでしょうか?また、あるとした場合、ヨーロッパ系言語だけでしょうか?それとも、(日本語以外の)アジア系の言語のものもあるのでしょうか?

■ChatGPTの回答
 これらの文法とスペルのチェックツールは、多くの場合、英語を主要な対象言語として提供されていますが、近年では他の言語にも対応しているツールも増えてきています。ただし、ヨーロッパ系の言語や英語に比べて、アジア系の言語への対応はまだ限られている場合があります。
 英語以外の言語に対応しているツールも存在しますが、その範囲や品質はツールによって異なります。特にヨーロッパ系言語については、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語などの多くの言語に対応していることが一般的です。また、アジア系の言語に対する対応も徐々に増えてきていますが、まだ日本語以外のアジア系言語については選択肢が限られている場合があります。
 例えば、DeepLは英語から多くのヨーロッパ系言語や一部のアジア系言語への翻訳に対応しています。ただし、全ての言語に対応しているわけではありません。
 ツールの対応言語については、各ツールの公式ウェブサイトやドキュメンテーションを確認することで詳細な情報を得ることができます。特に必要な言語に対応しているかどうかを確認する際には、事前に情報収集を行うことが重要です。

「英語以外の言語に対応しているツールも存在します」と明言していますが、これは正しくありません。ここに挙げられたツールはいずれも英語の校正支援ツールです。

■ChatGPTへの質問
Q: チェックツールとしてDeepLを挙げていただいているのは、ローカライズした製品(ドキュメント)とDeepLでの翻訳結果を比較して、その品質をチェックするということでしょうか?それとも、比較のところを自動化できるなにかもご提案いただけるのでしょうか?

■ChatGPTの回答
 申し訳ありませんが、DeepLは主に機械翻訳ツールとして知られており、直接に文法やスペルのチェックを行うツールとは異なります。DeepLは文書を機械翻訳する際に利用され、翻訳の品質向上を目指す際に参考にされることもありますが、文法やスペルの詳細なチェックには特化していません。
 ローカリゼーションの品質向上のために、ローカライズした製品のドキュメントとその翻訳結果を比較する手法は一般的です。これを手動で行うことも可能ですが、自動化された方法も存在します。具体的な自動化ツールとしては、以下のようなものがあります:

Translation Memory (TM) システム:ローカライゼーションプロジェクトで使用される翻訳メモリツールは、以前の翻訳を保存・再利用することで品質向上をサポートします。同じあるいは類似の文が再度翻訳される際に、過去の翻訳結果と照合し、一貫性を保つことができます。
QA ツール:品質保証(QA)ツールは、翻訳されたテキストを自動的にチェックし、文法ミスやスペルミスを検出する機能を持つことがあります。SDL TradosやMemoQなどのツールがこれに該当します。
比較ツール:2つのテキストを比較し、差異を可視化するツールもあります。これによってローカライズされたドキュメントと翻訳結果を効果的に比較できます。
自動品質評価ツール:品質を評価する自動ツールも存在します。例えば、BLEUやTERなどの自動評価尺度を使用して、翻訳結果の品質を数値化することができます。

 ただし、いずれのツールも自動化されていても完全な品質評価を保証するわけではなく、人間の判断や専門性が必要な場合もあります。また、ローカライズされた製品や翻訳には文脈に依存する要素が多く含まれるため、ツールの結果を慎重に検討することが重要です。

まとめ:現時点でChatGPTができること

 ChatGPTを使えば、ネット上に溢れている常識的な情報を得ることができます。しかも、業界に参入したばかりの社員であっても、ChatGPTを使用すれば、間違いなく一とおりの情報をまとめることができます。これが可能であるなら、新入社員研修などは必要なくなります。単に新入社員にPCと課題を与えて、それをレポートさせればいいからです。新入社員に必要なのは、ChatGPTから適切な回答を得られるようにするための、適切なプロンプトの作り方だけですみます。

 しかし、ChatGPTは、そこから状況に応じた、創造的な個々の対応を考え出せるまでにはいたっていないようです。しかも、時として、素知らぬ顔をしてもっともらしい嘘をつくことがあります。旧来のモザイク画の破片を集めてきて、それをだいたい元どおりのモザイク画を仕上げることはできます。しかし、旧来のモザイク画の破片を集めてきて、そこから全く別の新たなモザイク画をつくることはできそうにありません。具体的、改革的な発案はなかなか難しいでしょう。ここが、現時点での、創造的な人との違いです。しかし、創造的な人には限りがあります。うかうかしていると、AIに負けてしまうかもしれませんね。

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