Bing AIの場合 – ChatGPTは、日本語や英語の質問で、回答内容は同じなのか(第2回)

 前回は、ChatGPTに、日本語でテクニカルライティングについて質問した内容を英語に変えて、ChatGPTに聞いてみました。今回は、ChatGPTと同じ英語の質問を、Bing AIにした結果を見てみます。どのような回答を得られたのでしょうか。Bing AI の回答に、最低限の日本語訳と解説を付けます。

<前回記事>ChatGPTに日本語と同じ内容を、英語で質問してみたら

Bing AIへの質問(質問内容は、ChatGPTと同じ)
Q:There is an English writing method called Technical Writing. Could you please tell me all the specific methods? I appreciate your help. (テクニカルライティングという英文のライティング手法がありますよね。その具体的な手法をすべて教えてくださいませんか。よろしくお願いします。)

目次

Bing AIに、日本語と同じ内容を、英語で質問してみたら

以下は、Bing AIの回答です。

■Bing AIの回答
Technical Writing is a style of writing that is used to convey technical information in a clear and concise manner.(テクニカルライティングは、技術情報を明瞭で簡潔に伝えるライティングだそうです。)
Here are some tips to help you write effective technical documents 1:(以下に、効果的なドキュメントを書くためのヒントを挙げるそうです。)

Define your project (ドキュメントの目的とターゲットオーディエンスの特定): Before you start writing, it’s important to define the scope of your project. This includes identifying your audience, the purpose of the document, and the specific information that needs to be conveyed.

 これは、日本語にはありませんでした。この「ドキュメントの目的とターゲットオーディエンスの特定」は、テクニカルライティングの中核になる考え方です。日本語では、「ロジカルライティング」が置かれていたところですが、日本語のところでご説明しましたように、テクニカルライティングとロジカルライティングは、直接、関係がありません。この英語のほうが、テクニカルライティングの第一の鉄則を、適切に表していると思います。

(Bing AI回答のつづき)
Analyze your audience (ターゲットオーディエンスを分析する): Understanding your audience is key to writing effective technical documents. Consider their level of technical expertise, their familiarity with the subject matter, and their expectations for the document.

これも、日本語にはありませんでした。これは一つ目の項目で述べていますように、テクニカルライティングの重要な項目です。ただし、これは一つ目の項目と内容がダブっています。

(Bing AI回答のつづき)
Create a persona for your reader (対象読者層のペルソナをつくる): Creating a persona for your reader can help you tailor your writing to their specific needs. This includes identifying their goals, challenges, and preferences.

これも、日本語にはありませんでした。ただし、ペルソナ作成は、上記の「ターゲットオーディエンス」と重複してしまいます。ターゲットオーディエンスを特定してからペルソナをつくるわけですから。同じような内容を3回繰り返していることになります。

(Bing AI回答のつづき)
Use simple language (簡潔な言葉を使う): Technical documents should be written in clear and concise language that is easy to understand. Avoid using jargon or technical terms that may be unfamiliar to your audience.

これは、日本語の「文章表現」と同様です。“jargon or technical terms” (俗語や専門用語)は避けましょうと書かれています。

日本語では「構造化された文書」だったものが、「論理的な構成」に置き換わっています。「論理性」と「構造化」では意味が異なります。両方とも必要ですが、「構造化」は、直接、テクニカルライティングとは関係がありません。

(Bing AI回答のつづき)
Understand the content (内容を理解する): It’s important to have a deep understanding of the subject matter before you start writing. This includes conducting research, reviewing existing documentation, and consulting with subject matter experts.

これは、日本語にはありませんでした。しかし、これは、テクニカルライティングに限ったことではありません。

(Bing AI回答のつづき)
Create an outline (アウトラインを作る): Creating an outline can help you organize your thoughts and ensure that you cover all of the necessary information in your document.

これも、日本語にはありませんでした。これは、テクニカルライティングでも基本です。

(Bing AI回答のつづき)
Consider the structure (構造を検討する): The structure of your document should be logical and easy to follow. This includes using headings, subheadings, and lists to break up large blocks of text.

これも、日本語にはありませんでした。これは、「構造」ではなく「構成」でしたら、テクニカルライティングでも基本です。

(Bing AI回答のつづき)
Incorporate examples (例を挙げる): Examples can help illustrate complex concepts and make your document more engaging for readers.

これも、日本語にはありませんでした。これは、(テクニカルライティングの)パラグラフライティングで、トピック文を支援するサポート文を書くための一つの手法です。

(Bing AI回答のつづき)
I hope these tips help you write effective technical documents! Let me know if you have any other questions.

詳細情報:
1. bing.com
2. developers.google.com
3. indeed.com
4. whatfix.com
5. medium.com
+1 その他

Bing AIは、言語によって回答が異なる?

日本語と英語とを全体的に比較すると、日本語のほうがよくまとめられていると思います。

 特筆すべきこととして、Bing AIの場合は、日本語と英語で共通項目はありませんでした。それぞれの最初の項目が、日本語では「ロジカルライティング」でしたし、英語では「ドキュメントの目的とターゲットオーディエンスの特定」でした。これは、言語によって地域差が出るということを示しています。したがって、前回述べられたChatGPTの説明はBing AIには当てはまらないような気がしました。

 そこで、このことを、Bing AIに質問してみました。その答えは簡単で、なんと「言語によって、回答される内容は異なる」とのことでした。これは、Bing AIがChatGPTを使用してはいるけれど、言語モデルは言語によって異なるということです。また、検索エンジンのBingに影響されますので、回答は検索結果に依存しがちなのだそうです。結果として、回答される情報は、地域によって(言語によって)差が出ます。また、検索先サイトの情報が誤っている場合は、誤った情報がそのまま出力されることになります。日本語で「ロジカルライティング」が最初に挙げられた理由が理解できます。ある一つのサイトの情報に依存してしまったからです。このあたり、微妙であり、注意が必要です。

 今後も、テクニカルライティング分野における生成AIの活用について、検討を進める予定です。

(終わり- Bing AI編 – ChatGPTは、日本語や英語の質問で、回答内容は同じなのか 第2回)

(参考)ロジカルライティングについて、Bing AIに聞いてみる

上記の「ロジカルライティング」についてBing AIに聞いてみました。

Bing AIへの質問
先日、テクニカルライティングについて質問したときに、テクニカルライティングは「ロジカルライティング」であると回答してもらいましたが、「ロジカルライティング」はテクニカルライティングと異なります。どうして、こんな回答を出されたのか教えてください。

■Bing AIの回答
こんにちは。先日の回答について、誤解を招くような表現をしてしまい、申し訳ありませんでした。テクニカルライティングとロジカルライティングは異なる概念です。テクニカルライティングは、技術的な内容を分かりやすく伝えるための文章作成技法であり、ロジカルライティングは、論理的な文章を書くための技法です。
ご質問に対して、私が回答した内容は誤りでした。再度、お詫び申し上げます。

質問に対する基本的な回答をもらえていないので、Bing AIにもう一度聞いてみました。

Bing AIへの質問
どうもありがとうございます。すみません、どうして、こんな回答を出されたのか教えてください。その理由を知りたいのです。ごめんなさい。

この質問に対して、Bing AIは先ほどと同じ内容を繰り返してきました。どうやら、ここまでのようです。これでは、対話によって内容を改善していくということは不可能です。これでは、“Chat”の意味がありません。それとも、私が下手なだけで、プロンプティングのテクニックによっては適切な対話を導いていけるのでしょうか(ここのところは、今後、検討すべき課題かもしれません)。

ということで、Bing AIは素直に謝ってくれましたが、どうもすっきりしません。結局は、こういったチャット型AIを使用する場合も、AI翻訳を利用するときと同様に、各分野の専門家(SME)の校正者が必要だということに変わりないのではないでしょうか。

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