前回は、ChatGPTに、日本語でテクニカルライティングについて質問した内容を英語に変えて、ChatGPTに聞いてみました。今回は、ChatGPTと同じ英語の質問を、Bing AIにした結果を見てみます。どのような回答を得られたのでしょうか。Bing AI の回答に、最低限の日本語訳と解説を付けます。
<前回記事>ChatGPTに日本語と同じ内容を、英語で質問してみたら
Bing AIに、日本語と同じ内容を、英語で質問してみたら
以下は、Bing AIの回答です。
これは、日本語にはありませんでした。この「ドキュメントの目的とターゲットオーディエンスの特定」は、テクニカルライティングの中核になる考え方です。日本語では、「ロジカルライティング」が置かれていたところですが、日本語のところでご説明しましたように、テクニカルライティングとロジカルライティングは、直接、関係がありません。この英語のほうが、テクニカルライティングの第一の鉄則を、適切に表していると思います。
これも、日本語にはありませんでした。これは一つ目の項目で述べていますように、テクニカルライティングの重要な項目です。ただし、これは一つ目の項目と内容がダブっています。
これも、日本語にはありませんでした。ただし、ペルソナ作成は、上記の「ターゲットオーディエンス」と重複してしまいます。ターゲットオーディエンスを特定してからペルソナをつくるわけですから。同じような内容を3回繰り返していることになります。
これは、日本語の「文章表現」と同様です。“jargon or technical terms” (俗語や専門用語)は避けましょうと書かれています。
日本語では「構造化された文書」だったものが、「論理的な構成」に置き換わっています。「論理性」と「構造化」では意味が異なります。両方とも必要ですが、「構造化」は、直接、テクニカルライティングとは関係がありません。
これは、日本語にはありませんでした。しかし、これは、テクニカルライティングに限ったことではありません。
これも、日本語にはありませんでした。これは、テクニカルライティングでも基本です。
これも、日本語にはありませんでした。これは、「構造」ではなく「構成」でしたら、テクニカルライティングでも基本です。
これも、日本語にはありませんでした。これは、(テクニカルライティングの)パラグラフライティングで、トピック文を支援するサポート文を書くための一つの手法です。
Bing AIは、言語によって回答が異なる?
日本語と英語とを全体的に比較すると、日本語のほうがよくまとめられていると思います。
特筆すべきこととして、Bing AIの場合は、日本語と英語で共通項目はありませんでした。それぞれの最初の項目が、日本語では「ロジカルライティング」でしたし、英語では「ドキュメントの目的とターゲットオーディエンスの特定」でした。これは、言語によって地域差が出るということを示しています。したがって、前回述べられたChatGPTの説明はBing AIには当てはまらないような気がしました。
そこで、このことを、Bing AIに質問してみました。その答えは簡単で、なんと「言語によって、回答される内容は異なる」とのことでした。これは、Bing AIがChatGPTを使用してはいるけれど、言語モデルは言語によって異なるということです。また、検索エンジンのBingに影響されますので、回答は検索結果に依存しがちなのだそうです。結果として、回答される情報は、地域によって(言語によって)差が出ます。また、検索先サイトの情報が誤っている場合は、誤った情報がそのまま出力されることになります。日本語で「ロジカルライティング」が最初に挙げられた理由が理解できます。ある一つのサイトの情報に依存してしまったからです。このあたり、微妙であり、注意が必要です。
今後も、テクニカルライティング分野における生成AIの活用について、検討を進める予定です。
(終わり- Bing AI編 – ChatGPTは、日本語や英語の質問で、回答内容は同じなのか 第2回)
(参考)ロジカルライティングについて、Bing AIに聞いてみる
上記の「ロジカルライティング」についてBing AIに聞いてみました。
質問に対する基本的な回答をもらえていないので、Bing AIにもう一度聞いてみました。
この質問に対して、Bing AIは先ほどと同じ内容を繰り返してきました。どうやら、ここまでのようです。これでは、対話によって内容を改善していくということは不可能です。これでは、“Chat”の意味がありません。それとも、私が下手なだけで、プロンプティングのテクニックによっては適切な対話を導いていけるのでしょうか(ここのところは、今後、検討すべき課題かもしれません)。
ということで、Bing AIは素直に謝ってくれましたが、どうもすっきりしません。結局は、こういったチャット型AIを使用する場合も、AI翻訳を利用するときと同様に、各分野の専門家(SME)の校正者が必要だということに変わりないのではないでしょうか。
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