2024年9月、1年ぶりにヨーロッパに出張しました。目的は、Boeingのロンドン支社で開催される第89回ASD-STE100(Simplified English)のSTEMG(STE Maintenance Group)の会議に出席するためです。その会議では、来年早々にリリース予定のASD-STE100 Issue 9の内容を討議します。
今回は、その前後の旅程も含めてご報告させていただきます。
会議自体はロンドンで行われるのですが、会議の1週間ほど前に、エアフランスを利用して、パリから入りました。旅程は、パリ→ブリュッセル→パリ→ロンドン→パリという、あまり効率的でないものです(エアフランスを利用したのでこのようになりました。Eurostarでドーバー海峡を往復しました)。パリに到着したのは、ちょうどパラリンピックの終わった9月9日です。その翌日、ブリュッセルで旧友を訪ね、2日ほど過ごして、パリに戻りました。
Metro in Paris
パリはメトロ(地下鉄)が張り巡らされているので、非常に便利です。しかし、メトロは、ほとんどの駅でエスカレーターもエレベーターもなく、上り下りは階段を使うしかないので、乗り換えなどは結構たいへんです。地下鉄駅の約1割がバリアフリー化しているという話ですが、使用した駅のどこにもそんな形跡はありませんでした。また、地上では石畳が多いので、車椅子の使用は難しかったようです。このようなところでパラリンピックが開催されたのかと思うと不思議でなりませんでした。なんでも、その時は代替の地上交通があったとかいう話も聞きましたが、街中にはなにもそのような形跡はありませんでした。パラリンピックが終わって2週間も経とうというのに、オリンピック規制(使用できない駅)の表示がメトロの路線図にそのままに放置されていたり、エッフェル塔への最寄り駅がその手前の駅に表示されていたり(迂回路が設定されたまま!)、セーヌ川沿いの競技場の跡はまだ片づけられていなかったりしていたので、「代替の地上交通」というのは信じられませんでした。
パラリンピックの開催時に、もし日本がこのような状況であったら、大問題に発展していたことでしょうし、オリンピックを辞退することになっていたと思います。交通網なら整備してあるからいいじゃないかと強弁されるかもしれませんが、どうも、納得がいきません。
(画像クリックで拡大表示します)



Eurostar
翌週の月曜日、フランスに来て、ちょうど1週間後、Eurostarでロンドンに向かいました。パリからロンドンまではEurostarで約2時間30分ですので、飛行機を利用するまでもありません。ロンドンに向かうEurostarは、パリ北駅の2階から出ています(ロンドンまでノンストップです)。ただし、Brexit以降、イギリスはEU圏から離脱したので、パリ北駅で(フランスから)出国と(イギリスへの)入国をする必要があります。そのために、Eurostarに乗る人は、出発の1時間前には駅に行くようにと案内されています。
ところが、出国審査も入国審査もほぼかたちだけですので、1時間前に行くと、狭くて混雑した待合室で長く待たされる羽目になります(もちろん、遅く行っても良いのでしょうが、その点は自己責任ということになります)。もし、パリに戻らずにそのままロンドンから日本に戻る方で免税品をお持ちの方は、このパリ北駅で免税手続きを済ませる必要があります。私もラファイエット(老舗デパート)で買い物をしていましたので、手続きをする必要があったのですが、ラファイエットの店員さんが言っていた免税手続き機が見当たらず、苦労しました。ほかの方も苦労されていましたよ。要注意です。


パリを出たEurostarは、ロンドンのセント パンクラス駅に到着します。その駅に離接するキングズ クロス駅は、ハリー ポッターがホグワーツ特急に乗る9¾番線があることで有名です。カートが半分だけ煉瓦の壁に突っ込んだ設定の場所で、たくさんの人たちが写真を撮るために並んでいました。


Tube in London
セントパンクラス駅からホテルまでは、Tube(地下鉄)で6駅でしたので、Tubeを使いました。切符を買ってから気づいたことですが、初乗りが1人6.7ポンドと高額でした。高いとは聞いていましたが、日本円に換算すると1300円弱です(えぇーっ!)。パリのメトロは、初乗りで2.15ユーロ(約350円)です。もちろん、ロンドンにもスイカのようなオイスターカードというのがあるのですが、短期滞在(実質、利用するのは2~3日)ですので、それを買うつもりはありませんでした。駅員に苦情を言ったら、非接触タイプのクレジットカードの使用をすすめられました。そのほうが、オイスターカードと同額で乗れるので便利だそうです(それでも、2.70ポンドですので、日本円にすると約500円です)。
ASD STEMG Meeting
翌日から、ロンドンのBoeing支社で第89回STEMG会議に参加しました。ロンドンのBoeing社は、ウェストミンスター寺院まで徒歩で約4分、ビッグベンまで約10分、バッキンガム宮殿まで約13分と、好立地(?)にあります。
Issue 8を発行してから約3年の間に提案された改善点を、全メンバーが参加して、すべて討議していきます。これによる改善点をすべて反映させた原案を10月初旬にまとめ、それを全員で校正していきます。そして、来年の1月20日にIssue 9としてリリースします。
いつも思うことですが、この会合に参加することは、自身の英語力をつける良い機会になります。




London Transport Network
ロンドンは、バス(例の2階建てバス)やチューブ(地下鉄)の交通網が発達しているのでとても便利です。バスとチューブが乗り放題の一日乗車券を買って、(特にバスを)ランダムに乗り回すと楽しいですよ。


ロンドンのチューブは、かなり深さがあることもあって、ほとんどの駅にエスカレーターやエレベーターが付いてました(らせん状の階段がある駅では、エレベーターをお使いください。階段がらせん状になっているということは、ホームがかなり深いところにあることを意味しています)。いずれにしても、パリのメトロとは大違いです。


また、パリのメトロでは、上りと下りどちらに乗るのかがわかりづらいところが多いです。これは乗るたびに迷います。常に、地下鉄通路の分岐のところで行き先を確認する必要があります。これは、日本の地下鉄の乗換駅でも同様です。不慣れな外国人の方は、上りと下りどちらに乗るのかがわかりにくくて、迷っているところをよく見かけます。こういう私も、ホームに来ている電車に飛び乗ったら、反対方向行の電車だったということがあります。
しかし、ロンドンの地下鉄の場合は、上りと下りどちらに乗るのかが非常にわかりやすいです。というのも、すべての路線で、その上りと下りをnorthbound/southbound、または、eastbound/westboundという案内表示板で示しているので、不慣れな人でも、地下鉄の路線図を手にしてさえいれば、今居る駅の北/南かとか、東/西かと判断できるので、迷わないで済むのです。

ただ、道路を歩く場合は、車や自転車に注意する必要があります。パリでは歩行者優先が守られているようでしたが、ロンドンでは明らかに車や自転車が優先でした。交差点以外には横断歩道が無いようで、横断歩道らしきところでは、「左右に注意して渡れ」というようなことが書いてあるだけです。渡ろうとすると、自転車が猛スピードで突っ込んできて、罵り声をあげながら走り去っていきます。歩行者の皆さんも、そこのところわきまえているようです。それはそれでいいのですが、これでいいのだろうかと、ちょっと疑問を感じました。
ただ、一か所だけ、横断歩道の前でしっかりと車が止まってくれるところがありました。旅行客が、堂々と車を止めて自分たちを撮影しているのです。それは、アビーロードの交差点でした!

まとめ
今回は、パリとロンドンの2つの都市を行き来したので、その違いがよくわかりました。残念ながら、パリはもう昔のパリではないような気がします。街に落ち着きがありません(もちろん、良いところもあるのですが)。それに比べると、ロンドンは喧騒の中にも落ち着きがあって、風格が感じられます。しかし、そうは言うものの、ロンドンも違和感が残りました。私のような日本人にとっては、両都市とも、日本とは違う何かがあったからです。
パリもロンドンもヨーロッパを代表する都市です。海外に出て、この両都市を訪問して、日本との大きな違いが見えてきたことがありますので、それを次回、お話しさせていただきます。
<終わり- 海外に出て見えてきたこと ― 世界標準と日本標準(1)>
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