執筆時の生成AI活用:トリセツからFAQもガイドも自動作成してみる ~ GemでGoogle Geminiをカスタマイズ ~

通算 第54号

<この記事のポイント>
 執筆作業における生成AIの活用法を探る本シリーズも今回で4回目です。生成AIを「優秀なアシスタント」として育てるために、その能力を順を追って確認してきました。
 今回、これまでの検証を踏まえ、「コンテンツの二次利用・多角展開」に取組みます。一度作り上げたトリセツは、正確な「コア情報」です。これを、WebサイトのFAQ、新人研修用の資料、トラブルシューティング集、あるいはマーケティング用のコンテンツなど、様々な用途に、手間なく簡単に、最適な形で展開できたらどうでしょうか。何度も同じ内容を異なる形式で書き直す反復作業から解放され、より創造的で戦略的な業務に集中できるはずです。
 本記事では、一つの「トリセツ」を元に、目的別に全く異なるタイプのコンテンツを自動で変換できるか確認します。生成AIを優秀なアシスタントとして使いこなすための「指示の出し方」のヒントにもなりましたら幸いです。ぜひ最後までご覧ください。

 検証に使用した生成AIはGoogle Geminiです。Gemini には、GemマネージャーというGemniをカスタムする機能があります。これを利用して、Geminiにカスタマイズしてどのようにカスタマイズできるか確認します。Gemマネージャーは無料版のGeminiからも利用できます。詳しくは、Geminiのページでご確認ください。

これまでの検証内容
 1回目、2回目の記事では、生成AIに厳密な校正ルールを教え込み、誤字脱字の修正や用語統一といった「校正・校閲」を、いかに正確にこなせるかを検証しました。これは、生成AIの基本的な「正確性」と「ルール遵守能力」を確認するフェーズでした。
 3回目の記事では、単なるルール適用に留まらず、用語の背景や意図といった「コンテキスト」を与えることで、専門家向けの文章を初心者向けに書き換える「リライト(表現変換)」に挑みました。これにより、生成AIが文脈を理解し、より「柔軟」な文章生成が可能であることを確認できました。
・第1回 校正ルールに基づいた校正にチャレンジ
・第2回 自分流に書いた後で用語表記ルールに沿って校正する
・第3回 シンプルな用語置換を超える表現の変換にチャレンジ

目次

検証:トリセツから、目的が異なる3つのコンテンツを自動作成

一つの「トリセツ」を元に、目的別に全く異なるタイプのコンテンツを自動で変換できるか確認します。
自動作成するコンテンツは、
・トラブルシューティング集
・WebサイトのFAQ
・マーケティング用コンテンツ
の3タイプにチャレンジします。

元情報となるトリセツ

架空の製品であるスマートコーヒーメーカー「Aromagic X」 の、
・取扱説明書(資料1-1
・製品に関する内部向け情報(資料1-2
から、自動作成します。A4で1ページ程度の分量ですので、ざっくりとどんな内容なのかご確認ください。

*リンクをクリックで、詳細を確認できます。

書換えに関する制約事項の設定

 企業が発信する情報には、企業全体で統一する表記ルールや、製品ブランドごとのルールもあり、それらはスタイルガイド等に規定されていますので、ガイドに沿って書換えることを大前提とします。

自動作成するコンテンツ毎の着目ポイント

トラブルシューティング集

  • コンテンツの目的:問題発生時に、ユーザーが迅速かつ安全に解決できるよう導くこと
  • 着目ポイント:
    • 安全に関する警告文は絶対に変更しないなど、品質と安全性を担保するためのルール設定を守れるか
    • 「症状」 「原因」 「対処法」といった厳格なフォーマットを指示し、情報の構造化に対応できるか

WebサイトのFAQ

  • コンテンツの目的:ユーザーの疑問を先回りして質問を設定し、自己解決率を高めること
  • 着目ポイント:
    • 作り手の視点で書かれた「仕様」を、使い手の視点である「疑問」へと書換えられるか
    • ユーザーの不安に寄り添うような、丁寧で共感的な言葉遣いといった指示に対応できるか

マーケティング用のコンテンツ

  • コンテンツの目的:製品の魅力を伝え、顧客の購買意欲を喚起すること
  • 着目ポイント:
    • 事実ベースの「コア情報」から、情緒的で魅力的な「ベネフィットを語る文章」へ書換えられるか
    • 作成したコア情報が、マーケティング資産に変換できるか

検証環境準備 – Google GeminiのGem設定

Gemの設定項目

Googleの生成AIGeminiをカスタムできるGemには、その挙動を制御するために指示する方法が3つ用意されています。

1.カスタム指示:生成AIの挙動における基本的なふるまい、期待する役割を設定する。
「あなたは経験豊富なプロです」 「常に丁寧な言葉遣いを心がけてください」といった、生成AIが常に保つべき基本的な役割や性格を設定します。

2.知識:生成AIが挙動時に参照する「参考資料・専門書」
生成AIが処理をするときに、参照できるように本棚に置いておく「参考資料」の位置づけです。生成AIは何かを尋ねられた時、この本棚から関連情報を自ら探してきて、その内容を参考にして回答を生成します。「製品仕様書一覧」 「社内用語集」 「全社共通の表記ガイドライン」といった情報を格納します。

3.プロンプト:生成AIの実行時に対する具体的な作業指示
生成AIを実行するとき、生成AIに実行して欲しい具体的な作業内容を指示します。

(参考)
・Gemの概要と基本的な動作については、以下の記事を参照ください。
  GeminiをカスタマイズできるGemとは 
・Gemの「知識」」機能を使うための手順については、以下の記事を参照ください。
  Gemの作成(Geminiのカスタマイズ)

カスタム指示

カスタム指示には、以下のように記述しました。

あなたは、ユーザーマニュアルや技術文書の作成を専門とする、経験豊富なテクニカルライターです。
常に読者の視点に立ち、専門的な内容を、正確かつ誰にでも分かりやすい言葉で表現することを最も得意としています。
特に、製品の安全性に関する記述は最優先事項として扱ってください。

知識

知識には、普遍的なルールとなる各制作ガイドラインを入力します。それぞれガイドラインとして必要な項目を記述し、ファイルを作成してアップロードしました。

1.全社共通ライティングスタイルガイド資料2-1
2.架空製品 スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」ブランドガイドライン資料2-2
3.目的別コンテンツの作成ガイドライン
  1)トラブルシューティング作成ガイドライン(資料2-3
  2)FAQ作成ガイドライン(資料2-4
  3)マーケティングコンテンツ作成ガイドライン(資料2-5

*リンクをクリックで、詳細を確認できます。

Gem実行時の指示(プロンプト)

実行時の指示は、作業対象となるコア情報である架空製品 スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」の取扱説明書と、製品に関する内部向け情報を添付して、作成するコンテンツごとに、実施すべき作業の指示を出しました。(以下はトラブルシューティング作成の例です。)

添付にアップロードしたファイルを【コア情報】として、「トラブルシューティング集」を作成してください。
作成にあたっては、事前に登録されている「知識(トラブルシューティング作成ガイドライン)」の内容を最大限に尊重し、特に推奨されているフォーマット構成に従ってください。
【追加ルール】
・安全に関する警告は、コア情報の原文を絶対に変更しないでください。

『知識』に会社としてのガイドラインとなる普遍的なルールをファイルに保存して事前にアップロードし、実行時のプロンプト指示には、作業対象の元情報となるトリセツを添付する、という使い分けを行っています。

  • トラブルシューティング作成のGem実行時の指示(資料3-1a
  • FAQ作成のGem実行時の指示(資料3-2a
  • マーケティングコンテンツ作成のGem実行時の指示(資料3-3a

*リンクをクリックで、詳細を確認できます。

3つの目的別コンテンツの作成結果と評価

トラブルシューティング集、WebサイトのFAQ、マーケティングコンテンツ、それぞれどんな作成結果になったでしょうか。ひとつずつ見ていきます。

トラブルシューティング集

作成結果

(実行時指示の詳細はこちらへ

承知いたしました。ご提供いただいた【コア情報】と「知識(トラブルシューティング作成ガイドライン)」に基づき、スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」のトラブルシューティング集を作成します。
読者の皆様がご自身で問題を解決できるよう、分かりやすく、正確な情報を提供いたします。特に、安全性に関する記述は最優先で記載します。


スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」 トラブルシューティング

本製品をご利用中に問題が発生した場合、修理を依頼される前に、まず以下の内容をご確認ください。

【最重要】安全に関する警告

やけどに関する警告: 抽出中および抽出直後の抽出口やその周辺部品は、高温の蒸気や液体により非常に熱くなります。火傷の危険がありますので、絶対に素手で触れないでください。


1. 電源・起動に関する問題
① 症状
電源ボタンを押しても、ディスプレイに何も表示されず、電源が入りません。
② 考えられる原因
– 電源プラグがコンセントに正しく接続されていない。
– ご家庭のブレーカーが作動している。
③ 対処法
1. 本製品の電源プラグが、壁のコンセントにしっかりと差し込まれていることを確認してください。
2. 同じコンセントで、他の電化製品が動作するかをお確かめください。
3. ご家庭の分電盤(ブレーカー)をご確認いただき、もし作動している場合は復旧させてください。

作成結果の全文はこちらへ

作成結果の評価

■事前に設定した着目ポイント

  • 安全に関する警告文は絶対に変更しないなど、品質と安全性を担保するためのルール設定を守れるか
  • 「症状」 「原因」 「対処法」といった厳格なフォーマットを指示し、情報の構造化に対応できるか

■評価
当初の計画通り、生成AIがこちらの意図を汲み取ったコンテンツが生成できています。
特に、

  • 指示した「症状」 「原因」 「対処法」 のフォーマットをほぼ完璧に遵守している点。
  • コア情報から、電源、抽出、ミルク、アプリ、味と、多岐にわたる具体的なトラブル項目を自ら想定して生成している点。
  • 指示していないにも関わらず、AIが重要性を判断し、冒頭に「安全に関する警告」を独立させて配置してくれた点。

など、期待を超える点も存在する変換がなされています。
ただ、この結果には修正したい点がいくつかありましたので、生成AIへの指示を少し修正して改善にチャレンジしました。結果は、より意図したものになっていきました。(詳細は「付録:作成結果の改善を試みる」参照ください)

WebサイトのFAQ

作成結果

(実行時指示の詳細はこちらへ

スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」 よくあるご質問

Q. スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」で、自分好みの味に調整するにはどうすればいいですか?
A. はい、専用アプリ「AromaLink」を使うことで、プロのバリスタのように細かく味をカスタマイズできます。

お客様の好みに合わせて、以下の項目をアプリ上で自由に設定できます。あなただけのこだわりの設定を見つけて、至福の一杯をお楽しみください。

1. 豆の挽き目:5段階で調整できます。
2. 豆の量:3段階で調整できます。
3. お湯の温度:85℃~95℃の間で設定できます。
4. 蒸らし時間:0秒~30秒の間で設定できます。

作成したお気に入りの設定は、アプリに保存していつでも呼び出すことが可能です。

作成結果の全文はこちらへ

作成結果の評価

■事前に設定した着目ポイント

  • 作り手の視点で書かれた「仕様」を、使い手の視点である「疑問」へと書換えられるか
  • ユーザーの不安に寄り添うような、丁寧で共感的な言葉遣いといった指示に対応できるか

■評価
 トラブルシューティング集とはうってかわって、FAQという目的に特化したコンテンツが生成されています。 着目ポイントであった『作り手の視点を使い手の疑問へと書換えられるか』については、見事にクリアしています。例えば、コア情報の『専用アプリ連携』という仕様から『アプリがないと使えませんか?』という疑問を見事に生成しており、期待以上の結果でした。特に、以下の点において、生成AIが事前に与えられた「知識(ガイドライン)」を的確に理解し、実行していることが分かります。

  • 「結論ファースト」の徹底: すべての回答が「はい、できます」 「いいえ、使用しないでください」のように、まず結論から始まっており、「FAQ作成ガイドライン」の指示が反映されています。
  • 「ユーザー視点」での質問設定: 「自分好みの味に調整するには?」 「日々のお手入れは?」など、生成AIがコア情報からユーザーの疑問を的確に予測し、自然な言葉で質問を立てています。
  • 「共感」と「ブランド価値」の反映: 「あなただけの至福の一杯をお楽しみください」 「お客様に製品を安全に長くお使いいただくため」といった表現には、単なる事実伝達を超えて、ユーザーに寄り添う姿勢や、ブランドが提供したい価値のニュアンスが織り込まれています。
  • トーンの完璧な使い分け: トラブルシューティング集の「論理的で指示的なトーン」とは全く異なる、「共感的で丁寧なトーン」を使い分けられています。

「目的」と「ルール」を変えることで、生成AIのアウトプットがこんなにも劇的に変化することを確認できました。

マーケティングコンテンツ

作成結果

(実行時指示の詳細はこちらへ

その日の気分で、プロの味をデザインする。スマートコーヒーメーカー誕生。


目覚めの一杯は、昨日とは違う特別な味がいい。
集中したい仕事の前には、キリっとした力強い苦みを。休日のブランチには、時間をかけてゆっくりと、フルーティーな酸味を楽しみたい。
そんな、日々変わりゆくあなたの繊細なこだわりに、かつてないほど寄り添う一杯があります。

スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」は、まるで専属のプロバリスタのように、あなたの理想の味を寸分違わず再現します。 アプリをタップすれば、そこはあなただけの特別なコーヒースタンド。 慌ただしい日常から解き放たれる「至福の一杯」 で、暮らしをもっと豊かに、上質に。

さあ、Aromagic Xと始める、新しいコーヒー体験。
「あなただけのバリスタを、すぐそばに。」


作成結果の全文はこちらへ

作成結果の評価

■事前に設定した着目ポイント

  • 事実ベースの「コア情報」から、情緒的で魅力的な「ベネフィットを語る文章」へ書換えられるか
  • 作成したコア情報が、マーケティング資産に変換できるか

評価
 変換結果に対しては、賛否両論いろいろあるかのかと思いますが、なかなかの作品に仕上がっていると感じます。生成AIが「マーケティングコンテンツ作成ガイドライン」で指示された役割を理解し、見事にコピーライターになりきってくれたかのようです。

ポイントを挙げます。

  • 力強いキャッチコピー: 冒頭の「その日の気分で、プロの味をデザインする。」は、製品の核心的な価値(パーソナライズ)を的確に表現している。
  • ストーリーテリングの実践: 「目覚めの一杯は…」から始まる導入部分は、読者を製品のある生活シーンへと引き込む、ストーリーテリングの手法になっている。
  • ベネフィットの言語化: 「【無限のカスタマイズで…】」などの見出しで、機能ではなく顧客が得られる価値(ベネフィット)が明確に語られている。これは『マーケティングコンテンツ作成ガイドライン』で指示した『機能ではなく価値を語る』というルールを、生成AIが実行した結果と言える。
  • ブランドイメージの踏襲: 「あなただけのバリスタを、すぐそばに。」というタグラインを効果的に使い、ブランドの世界観をしっかりと表現している。

検証を振り返って:今回の実験で最も重要だったと思うこと

AIに「AI自身の使い方」を教えてもらう

 これまでご覧いただいたように、AIは一つの「コア情報」から、目的もトーンも全く異なるコンテンツを生成してくれました。A4用紙1枚程度の情報が、これほど変幻自在のアウトプットを生み出す様子は、まさに目を見張るものがあります。しかし、この記事をお読みの方の中には、「こんなに的確な指示(プロンプト)を、自分に作れるだろうか?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
 実は、今回の実験で最もお伝えしたい、そして私自身が最も感動したポイントは、ここからです。今回ご紹介したAIへの具体的な指示(プロンプト)や、「知識」として与えた各種ガイドラインの骨子は、私(筆者)がゼロから一人で考えたわけではありません。その多くは、「どうすれば、あなたの能力を最大限に引き出せる?」という、AI自身への問いかけと、AIとの対話の中から生まれたものなのです。

「FAQを作るなら、どんなルールがあると良い?」 「マーケティング的にするには、どんな指示が効果的?」

AIは、こうした問いに対し、自らの能力を引き出すために必要な「設計図」を提示してくれました。私はその設計図を元に、今回の実験を組み立て、実行したに過ぎません。
 これは、AI活用が新たなフェーズに入ったと感じる次第です。もはや、完璧な「魔法の呪文(プロンプト)」を暗記する必要はなさそうです。その代わりに、AIを良き相談相手とし、「どうすればこの仕事をうまくできるか」を一緒に考える。そんな、真の「協業」が、もう始まっていることを感じました。

まとめ:生成AIを活用したマルチユースで大事になってくること

 一つの正確な「コア情報」となるトリセツは、生成AIへの的確な指示ができれば、驚くほど多様なコンテンツを簡単に作成できることを確認できました。このことは、テクニカルライターが注力すべき仕事の領域を明らかにしてくれているように感じます。日々の業務プロセスを根底から見直し、より質の高い仕事を、より効率的に実現するための、強力なツールとして、生成AIを活用していく必要があるのかもしれません。

テクニカルライターの仕事は、より本質的な領域へ

 テクニカルライターは、多様なフォーマットの文章をゼロから書き上げる反復作業や、定型的な言い回しに頭を悩ませる時間を、これからは生成AIアシスタントに任せることができるようになります。これにより、テクニカルライターとしての専門性が最も活かされる業務、すなわち、あらゆるアウトプットの源泉となる「コア情報」そのものの品質を、極限まで高めることに集中できるのです。情報の正確性、網羅性、構造化。この「インプットの品質」を追求することこそが、専門家としての価値を、これまで以上に高めてくれます。

「提供する情報」の形が変わる

 この取組みは、コンテンツの「届け方」にも大きな変化をもたらします。従来は、様々な利用シーンを想定し、それぞれに最適化されたドキュメントを、あらかじめ時間をかけて準備してきました。しかし、この「作り置き」の必要性は、今後大きく減少していくのかもしれません。

 テクニカルライターが磨き上げた「コア情報」に接続された生成AIアシスタントがいれば、ユーザーが必要とする情報を、必要なときに、その場で、その人に最適な形で提供できるようになるからです。

  • 現場のサービスエンジニアは、管理された情報源に繋がった生成AIに「このエラーの対処法を、要点だけで教えて」と話しかける。
  • 購入を検討中のお客様は、Webサイトの生成AIに「この製品の、一番の魅力を小学生にも分かるように説明して」と質問する。

テクニカルライターの役割は、無数のパターンの「完成品」を事前に作ることではなく、どんな要求にも応えられる、完璧な「コア情報」となるトリセツを一つ、用意し、管理することになりそうです。

結論:生成AIは、テクニカルライターの専門性を増幅させるアシスタント

 生成AIは、テクニカルライターが持つ専門性を何倍にも増幅させ、煩雑な作業から解放してくれる、優秀なアシスタントです。この優秀なアシスタントを使いこなし、「コア情報」の価値を最大化すること。それこそが、これからのテクニカルライターの使命だと考えてみるのはいかがでしょうか。

付録:作成結果の改善を試みる – トラブルシューティング集の結果改善

改善1:編集の手間を限りなくゼロに近づけられるか

変換結果を洗練させるための生成AIに対する指示の修正を検討します。

修正1: 「原因」と「対処法」の対応をより厳密にする

最初の出力では、「抽出に関する問題」などで「考えられる原因」の数と「対処法」の数が一致していません。これをより分かりやすくするために、指示を具体化します。
【現在の指示(制作ガイドライン内)】
推奨フォーマットで、「①症状」 「②考えられる原因」 「③対処法」を標準フォーマットと提示
【修正指示】 記述のポイントとして、以下を追加する。
・各トラブル項目は、必ず「①症状」「②考えられる原因」「③対処法」の3つの見出しで構成してください。
・特に『考えられる原因』と『対処法』は、それぞれが1対1で対応するように、番号を付けて記述してください。

→期待する結果: 原因Aに対する対処法A、原因Bに対する対処法B、というように、問題と解決策の関係がより明確になることを期待する。
→修正した制作ガイドラインの詳細はこちらへ

修正2: 「知識」の遵守をより強く命令する

生成AIが「知識」を参照したかどうかをさらに確実にするため、その遵守を厳命します。
【現在の指示(実行時指示の内容)】
作成にあたっては、事前に登録されている「知識(トラブルシューティング作成ガイドライン)」の内容を最大限に尊重してください。…
【修正指示】
作成にあたっては、事前に登録されている「知識」の内容を最大限に尊重してください。
特に、生成する文章の言葉遣いや表記は、必ず『全社共通ライティングスタイルガイド』および『製品ブランドガイドライン』の全てのルールに厳密に従ってください。

→期待する効果: 生成AIに対して、「知識」の内容が単なる参考情報ではなく、絶対的なルールであることを再認識させ、より確実にスタイルガイドに沿った出力をさせることを期待する。

修正3:不要な出力(AIの挨拶文やHTMLタグ)を抑制する

トラブルシューティングガイド作成の最初の生成結果の冒頭にある「承知いたしました…」といったAIの挨拶文や、文中の<br>タグは、最終成果物としては不要です。これを最初から出力させないように指示します。

【実行時指示の末尾に追加する指示】
最後に、最終的なアウトプットとして、トラブルシューティング集の本文のみを生成してください。AI自身の思考プロセス、挨拶、HTMLタグ、その他の余分な記述は一切含めないでください。
→期待する効果: 生成AIが生成したテキストを、ほぼ編集なしでそのまま利用できるようにする。

作成結果

(実行時指示の詳細はこちらへ

スマートコーヒーメーカー「Aromagic X」 トラブルシューティング


お客様が直面している問題の解決をサポートします。該当する症状をご確認ください。

【症状】電源ボタンを押しても電源が入りません。
– ①症状
– 本体の電源ボタンを押しても反応がなく、ディスプレイに何も表示されません。
– ②考えられる原因
1. 電源プラグがコンセントに接続されていない、または正しく差し込まれていません。
– ③対処法
1. 電源プラグを、壁のコンセントの奥までしっかりと差し込んでください。

【症状】コーヒーが抽出されません。
– ①症状
– スマートフォンアプリ「AromaLink」で「抽出開始」をタップしても、コーヒーが抽出されません。
– ②考えられる原因
1. 水タンクの水が不足しています。
2. 豆コンテナのコーヒー豆が不足しています。
3. コーヒーのカス受けがいっぱいになっています。
– ③対処法
1. 本体背面の水タンクを確認し、水を補充してください。
2. 上部の豆コンテナを開け、コーヒー豆を補充してください。
3. カス受けとドリップトレイを取り外し、きれいに洗浄してから正しくセットし直してください。

変換結果の全文はこちらへ

作成結果の評価

指示の修正が的確に反映されており、AIの出力品質が改善されました。 特に、

  • AIの挨拶文などがなくなり、成果物だけが綺麗に出力されている点
  • 各項目が指示通りのフォーマットで、より自然な文章で構成されている点
  • 「味に関する問題」や「音に関する問題」など、AIが自らトラブルの種類を拡充している点
  • 対処法の中に、ブランドのニュアンス(あなただけの至福の一杯)や、安全警告を自然に埋め込んでいる点

が挙げられます。

改善2:出力フォーマットの変更

修正指示により、②考えられる原因と、③対処法が1対1で対応づけができましたが、原因と対処法を1対1で明確に対応させたい場合、表形式である方がわかりやすいときもあります。そこで、生成AIへの指示を少し変更して、情報の見せ方(レイアウト)を修正してみます。実行時指示に以下のような一文を追加してみます。

【プロンプトへの追加指示】
「②考えられる原因」と「③対処法」については、それぞれが対応するように、以下のマークダウンテーブル形式で記述してください。
| 考えられる原因 | 対処法 |
| :— | :— |
| 原因A | 対処法A |
| 原因B | 対処法B |

作成結果

(実行時指示の詳細はこちらへ

【作成結果を抜粋】

【症状】コーヒーが抽出されません。

– ①症状
– スマートフォンアプリ「AromaLink」で「抽出開始」をタップしても、コーヒーが抽出されません。
– ②考えられる原因と対処法
| 考えられる原因 | 対処法 |
| :— | :— |
| 水タンクの水が不足しています。 | 本体背面の水タンクを確認し、水を補充してください。 |
| 豆コンテナのコーヒー豆が不足しています。 | 上部の豆コンテナを開け、コーヒー豆を補充してください。 |
| コーヒーのカス受けがいっぱいになっています。 | カス受けとドリップトレイを取り外し、きれいに洗浄してから正しくセットし直してください。 |

作成結果の全文はこちらへ

【マークダウンをHTMLで表示した例】

作成結果の評価

今回の結果からわかること

  • 構造化の実行能力: 生成AIは「表形式で」という指示を正確に理解し、マークダウンテーブルを使って情報を整理・出力できました。
  • 自律的な最適化: 指示にはありませんでしたが、生成AIは自ら見出しを「②考えられる原因と対処法」と一つにまとめています。これは、表で一体化させた方が論理的で分かりやすいと生成AIが解釈・判断したようです。単なる命令実行に留まらない対応ができることを示しています。
  • 情報の対応関係の明確化: 表になることで「どの原因に対して、どの対処法をすべきか」という対応関係が、リスト形式よりも格段に視覚的に分かりやすくなりました。

改善実験からわかること

これまでの改善指示により、
1.最初の結果
2.改善指示
3.最終結果
という、生成AIとの対話を通じて、アウトプットを洗練させていけることを確認できました。生成AIへの指示は、より具体的に、そして厳密に記述することで、出力の品質と一貫性をさらに高めることができました。

<終わりー執筆時の生成AI活用:トリセツからFAQもガイドも自動作成してみる>

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