先日、ヨーロッパのASD-STE100*のメンバーたちと、AIをSTEに適用するための準備の会議を行ないました。そのときに、違和感を持ったのは、ヨーロッパのメンバー全員が、AIに対してどのようなリスクがあるか、また、どのように対応するのかという観点から議論していたことでした。
私のほうは、たしかにAIの使われ方というところには疑問点がありましたが、わりとAIのある明るい未来を心に描いていました。ということで、議論はすぐにSTE用のオーサリングツールを開発するといった実務レベルでの討議になると思っていたからです。それに対して、ヨーロッパのメンバーから、日本のAIに対する法規制などの現状を尋ねられて、私は不確かなまま、現状に対する推測で答えるしかありませんでした。
そこで、会議後、私はChatGPT 4.0を使って、日本と世界のAIを取り巻く現状を調べてみることにしました。
*ASD-STE100: AeroSpace, Security, and Defence Industries Associations of Europe (ASD)ヨーロッパ航空宇宙防衛産業会が開発したSimplified Technical English (STE)の英文ライティングルール集。文法や語彙に制限を設けることによって、誤解/誤訳を防ぎ、わかりやすさを追求したもの。
日本やEU、アメリカのAIに関連する法律やガイドライン
中村:
日本やEU、アメリカのAIに関連する法律やガイドラインを教えてください。
AIによってどういったリスクが懸念されているか、具体的な例を挙げて説明してください。
日本やEU、アメリカの現在の状況と将来の予測に分けて教えてください。これらは、いずれも箇条書きでお願いします。インターネットを検索して調べたデータなどは、すべて出典を明示してください。
ChatGPT 4.0:
日本、EU、アメリカのAI関連の法律やガイドライン
日本
- 現行の法律・ガイドライン:
- 日本には現在、AIを直接規制する法律は存在しません。しかし、「AIビジネスガイドライン バージョン1.0」が2024年4月19日に発表され、企業に対してAIの安全で信頼できる使用を促す指針として機能しています。このガイドラインは法的拘束力はありませんが、AI開発者や利用者に対して「アジャイルガバナンス」を推奨しています(Home | White & Case LLP)。
- 「広島国際指針」は、AIシステムの安全性、セキュリティ、信頼性を確保するための世界的なガイドラインを確立しようとする取り組みの一環です(Home | White & Case LLP)。
- 「責任あるAIの推進に関する基本法案」の草案が検討されており、特定のAIシステムや開発者に対する規制が提案されています(Home | White & Case LLP、Govt Backs Originator Profile)。
- 将来の予測:
- 将来的には、AIに対する「ハードロー」アプローチ*への移行が検討されており、特に生成AIに対する規制の強化が予測されています(Govt Backs Originator Profile)。
EU(欧州連合)
- 現行の法律・ガイドライン:
- 2024年3月にEUはAI法(AI Act)を可決し、2024年5月21日に正式に発効しました。この法律は、AIシステムの使用をリスクに基づいて分類し、高リスクとされるシステムに対しては厳格な規制を課しています(MindFoundry、Atlantic Council)。
- 規制は2024年末から段階的に実施され、2026年までに完全実施される予定です。規制に違反した場合、最大3500万ユーロまたは全世界の売上高の7%の罰金が科される可能性があります(MindFoundry)。
- 将来の予測:
- AI法は、AI開発と使用において新しい国際標準を設定し、他の地域や国のAI規制にも影響を与えると期待されています。特に、透明性と説明責任の向上を重視し、AIシステムの信頼性確保を目指しています(Atlantic Council)。
アメリカ合衆国
- 現行の法律・ガイドライン:
- 現在、アメリカにはAIを特化して規制する包括的な連邦法は存在しませんが、いくつかの既存の法律(例:国家AIイニシアティブ法など)がAIの研究開発を支援しています(Home | White & Case LLP)。
- 2023年10月、バイデン大統領は「AIの安全で信頼できる開発と使用」に関する大統領令を発表し、AIシステムのテストと報告を企業に義務付けることを求めています(MindFoundry)。
- 「AIの権利章典」のホワイトハウス草案は、AIシステムの開発者に対するガイダンスを提供し、安全性と信頼性の基準を設けています(Home | White & Case LLP)。
- 将来の予測:
- アメリカは、AIに関する連邦規制機関の設立とより具体的なAI立法の導入を検討しています。これには、AIシステムの透明性と説明責任を確保するための新たな規則の策定が含まれると予想されます(Home | White & Case LLP)。
AIによるリスクと懸念
中村:
AIによってどういったリスクが懸念されているか、具体的な例を挙げて説明してください。
ChatGPT 4.0:
AIによるリスクと懸念
現在の状況
- データプライバシーとセキュリティのリスク: AIシステムが大量の個人データを使用するため、データプライバシーの侵害やセキュリティ上のリスクが懸念されています。特に、AIによるサイバー攻撃のリスクが増加しており、国家安全保障に関連する懸念も強まっています(Atlantic Council、CSIS)。
- バイアスと公平性のリスク: AIアルゴリズムが人種、性別、年齢などに基づく偏見を助長する可能性があります。これにより、雇用、金融サービス、法執行などの分野で不公平な結果が生じるリスクがあります(Home | White & Case LLP)。
- 倫理的リスク: 自律型AIシステムの意思決定に対する倫理的な懸念が増しています。特に、AIが誤った判断を下した場合の責任の所在が不明確であることが問題視されています(CSIS)。
将来の予測
- 経済的影響: AIの自動化により、特定の職業が淘汰されるリスクが高まる可能性があります。これにより、労働市場への影響が懸念されます(Home | White & Case LLP)。
- AIの暴走リスク: 特に軍事や安全保障において、AIシステムが人間の制御を超えて自己学習や自己強化を行うリスクが懸念されています。このようなシナリオは、技術的には可能性があると考えられていますが、倫理的および法的な課題を伴います(Govt Backs Originator Profile)。
- 規制の国際協調の必要性: AI技術のグローバルな普及に伴い、各国間での規制の不一致が課題となる可能性があり、国際的な協調が求められています(MindFoundry、Atlantic Council)。
これらのリスクと課題に対応するため、各国はAIに関する規制を強化し、国際的なガイドラインの策定を進めています。
EUはすでにEU AI Actと法制化して、規制を推進しています。さすがに、ヨーロッパは進んでいますね。それに対して、日本は相変わらず「後追い」です。EU AI Actをクリアしないとヨーロッパには輸出できなくなります(このこともあって、日本も遅ればせながら進むようですよ)。このあたり早く進めてほしいものですね。
「ハードロー」と「ソフトロー」、アプローチの違いについて
中村:
「ハードロー」アプローチと「ソフトロー」アプローチについて、中学生がわかるように説明してください。
ChatGPT:
「ハードロー」アプローチと「ソフトロー」アプローチについて、中学生にもわかりやすく説明します。
「ハードロー」アプローチ
「ハードロー」は、法律が厳しく定められている場合のことを指します。
- 特徴: 「ハードロー」の場合、法律に違反したら罰金を払ったり、刑務所に入ったりといった厳しい罰が科せられます。たとえば、交通ルールを破ったら罰金を払うのと同じように、AIに関する法律も厳しく守らなければならない決まりがある場合を「ハードロー」と言います。
- 例: ヨーロッパ連合(EU)では、「EU AI法」という厳しい法律を作って、AIが安全に使われるようにしています。違反すると大きな罰金が科せられる可能性があります(MindFoundry)。
「ソフトロー」アプローチ
「ソフトロー」は、法律がゆるやかで、強制力がない場合のことを指します。
- 特徴: 「ソフトロー」の場合、法律を守らなくても罰金や罰則はありませんが、「こうするのが良いですよ」というガイドラインやお手本のようなものを示します。企業や開発者が自主的にルールを守るように促す方法です。
- 例: 日本では、現在「AIビジネスガイドライン」というものがあります。これは法的に強制されるものではなく、企業や開発者がAIを安全に使うための目安を示しています(Home | White & Case LLP、CSIS)。
まとめ
簡単に言うと、「ハードロー」は守らないと罰がある厳しい法律で、「ソフトロー」は守ったほうが良いという目安のようなものです。どちらもAIを安全に使うために大切ですが、方法が違います。
日本の対応は「ソフトロー」ということになるのでしょうね。
フェイク動画は取り締まれないのか
中村:
少し、具体的な例で質問します。
アメリカの人気女性歌手のテイラー スウィフトがトランプを支持するというフェイク動画を、トランプがAIを使って作成してそれをSNSで発表しました。これは大きな非難を浴びましたが、こういったことは(アメリカの)法律で取り締まれないものでしょうか?
ChatGPT 4.0 :
テイラー・スウィフトがドナルド・トランプを支持するというフェイク動画をAIで作成し、それをSNSで公開する行為は、アメリカの法律においていくつかの異なる法律や規制の下で取り締まることが可能かもしれませんが、その取り締まりにはいくつかの課題と制限があります。
アメリカの法律での取り締まりの可能性
- 誹謗中傷(デフレーション): テイラー・スウィフトがトランプを支持するというフェイク動画が、彼女の名誉や評判を傷つける目的で作成され、広められた場合、これは「名誉毀損」(デフレーション)として訴えられる可能性があります。アメリカの法律では、個人の名誉を傷つける虚偽の発言に対しては法的な措置が取られる場合があります。しかし、名誉毀損の訴訟では、原告(この場合はテイラー・スウィフト)がその発言が虚偽であり、悪意があったことを証明しなければならないため、訴訟のハードルが高いことが多いです。
- フェイクニュース対策と深層偽造(ディープフェイク)法: 一部の州では、ディープフェイクに対する法的措置が講じられています。たとえば、カリフォルニア州では、選挙の前に意図的に有権者を誤解させるために作成されたディープフェイクを違法とする法律があります。しかし、この法律はカリフォルニア州内でのみ適用されるため、他の州や連邦レベルで同様の法規制が存在しない場合は取り締まりが難しいです。
- 著作権と肖像権の侵害: フェイク動画がテイラー・スウィフトの音声や画像を無断で使用した場合、これは著作権や肖像権の侵害として取り締まられる可能性があります。ただし、この場合も動画がどの程度リアルであるかや、その動画が商業目的で使用されているかなどが考慮されます。
ソーシャルメディアプラットフォームの規則: 多くのソーシャルメディアプラットフォームは、フェイクニュースや誤情報の拡散に対する独自のガイドラインを持っており、このようなフェイク動画が発見されると、プラットフォーム上で削除される場合があります。しかし、法的な観点からは、これらのガイドラインは法律とは異なり、プラットフォームのポリシーに依存しています。
法律での取り締まりの課題
- 言論の自由: アメリカ合衆国では、憲法修正第1条によって「言論の自由」が強く保護されています。そのため、政府が個人の表現を規制することには限界があります。これは、虚偽の情報やディープフェイクであっても、必ずしも違法ではない場合がある理由の一つです。
- 規制の限界と不一致: 連邦レベルでの包括的なAIやディープフェイクに関する規制がまだ確立されていないため、州ごとの法律や規則の違いが存在し、それにより法的な取り締まりが困難になることがあります。
結論
テイラー・スウィフトに対するフェイク動画の作成と公開は、多くの人から非難される行為であり、いくつかの法律の下で取り締まられる可能性がありますが、現在のアメリカの法制度では、こうした行為を取り締まるためにはまだ多くの課題が存在します。特に、言論の自由と法的規制のバランスを取ることが難しい点が問題となっています。
相手のことを「フェイク、フェイク」と攻撃しておきながら、その本人がこのようなモラルに反したフェイク動画を出して、恥も何もあったものではありませんね。こんな人が大統領候補というわけですから、世も末です。
また、テイラー スウィフトさんは、Xで、別のディープフェイクの被害にも遭ったそうです。適切な対応を取ることができないSNSは、見ないようにするしかないのでしょうか。
<終わり- ChatGPT 4.0は、TCライティングに活用できるか(8)- 日米欧のAI利用を取り巻く現状の違い>
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